心に残った話(16) 「肉腫」

私のこれまでの24年間の医師としての経験の中で印象深いエピソードを時々紹介したいと思います。すべて実話ですが、個人の特定が出来ないように、場所や時代は多少事実とは違います。よかったら、読んでみてください。

今回の主人公は70代の女性です。お腹に大きな肉腫が出来てしまいました。肉腫はがんとは違う悪性の腫瘤です。治療は、手術して切り取ってしまうしかありませんでした。私も、手術をお勧めしました。しかし、この方は、頑として手術を受け入れませんでした。よくよくお話を聞いてみると、ご兄弟の方が、以前、喉頭がんで手術を受けたことがあったそうです。その時、本人は手術を嫌がっていたのですが、家族皆で医師の言うとおりに手術を受けたほうが良いよ。と説得したそうです。手術後、顔はゆがみ、痛みが残り、喉に穴が開いているため話すことも出来ず、本当に可哀想で見ていられなかったそうです。

だから、もし、自分にがんが出来ても絶対手術はしない。と決めていたとのことです。

「困ったことになったなあ」と思案していた時、白血病にしか使えなかった薬が、最近、肉腫にも使えるようになったことを知りました。ただし、手術して再発した場合に限るという条件でしたが。「これだ!」と思いました。手術はしてなくても、効果は十分期待できます。ご本人と相談し、さっそく使ってみることにしました。
1ヶ月間お薬を飲んで頂いた後、大きな肉腫がウソのように小さくなっていました。
3ヵ月後にはきれいに消えていました。すごい!奇跡だ!と感じました。もし、大手術を受けていたら、こんなに元気にはなれなかったはずです。本当に手術をしなくてよかった。と患者さんと一緒に喜びました。薬は飲み続けなければいけませんが、以降、何年も再発することなく元気で過ごして頂いています。

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