医療に関する話 「初期の食道がん」
桑田佳祐さんが初期の食道がんと判明し、8月に治療(手術)を受けるとニュースが伝えていました。秋のコンサートツアーも休止になるとのこと。とても残念です。是非、元気に復活してほしいものです。
この初期の食道がん報道の『初期』という言葉がとても気になります。少し専門的になりますが、がん細胞の根の張り方が、食道の表面粘膜の厚みの2/3までに留まっていれば、これは転移がないことがわかっており、胃カメラでがんの部分だけ切り取ることが出来ます。これで、完治します。この場合のみが、本当の意味での「早期食道がん」と言えます。しかし、粘膜の厚みの2/3を超えて、粘膜筋板に達している場合や、粘膜下層に少しでも入っていれば、言葉の定義では早期食道がんでも、すでにリンパ節転移していることが多く、手術が必要です。
「本当の早期食道がん」は通常の内視鏡検査では判断できないことがあります。しかし、ルゴールという薬品を食道にふりかけると、がんの部分だけ白いしみとして浮き彫りにされ、発見されます。(下の内視鏡写真をご覧ください)これは、ルゴールが正常の食道粘膜だけに色素沈着し、癌細胞には染まらない特徴を利用しているわけです。
食道がんになりやすい条件は、男性で、アルコールとたばこの両方をたしなむ方です。ですから、この条件を満たす方の胃カメラ検査では、一見正常に見える食道でも、ルゴールを散布して白いしみが出てこないか見ておいた方が無難です。皆さんも胃カメラを受ける際には、是非、この点を担当医と確認してから検査に臨んでください。
注:食道は内側から外側に向かって、粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、筋層、外膜の層構造になっています。
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