Archive for the ‘院長「医療に関する話」’ Category

大腸粘膜内がん 

土曜日, 6 月 1st, 2019

大腸粘膜の層構造です。最近、大腸のポリープ切除(ポリペクトミー)をおこなった結果、ごく初期の大腸がん(粘膜内がん)だった方が人続きました。ポリペクトミーでがんは完全に取り切れていますので、追加の治療は必要ありません。

70代男性
数か月前に当院でポリペクトミーをおこなっています。個切除したのですが、まだいくつか残っていたため、追加のポリペクトミーをおこないました。12mm大のポリープが粘膜内がんでした。
70代女性
肛門の違和感のため大腸カメラをおこなったところ、S状結腸に15mm大のポリープを認めました。ポリペクトミーをおこなったところ、粘膜内癌でした。

大腸の壁は、内側から、①粘膜固有層 ②粘膜下層 ③固有筋層 (④しょう膜下層) ⑤しょう膜 の層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。
通常のポリペクトミーでは、②粘膜下層の深いところで切除されます(図の黄色いラインのすぐ上)。切除ラインは決して③固有筋層には入りません。切除したポリープを顕微鏡で観察し、がんが粘膜固有層に留まっていれば、「粘膜内がん」です。
がんが側方、垂直方向共に切除断端から確実に離れていることも重要です。
当院がいつもお願いしている病理の先生は、粘膜内がんであっても、「smがん」と同様に
・がんの分化度
・脈管侵襲の有無(リンパ管、脈管にがん細胞が無いか)
・浸潤先進部の族出(budding)(がん細胞のばらけ具合)
を詳しく検討してくれます。詳細な検討をすることで患者さんの安心度が増すと思うのです。いつも、頭が下がる思いです。

食道がんとNBI

水曜日, 5 月 15th, 2019

ゴルフ場のバンカー内視鏡検査において、早期の食道がんは通常観察では見つかりにくく、ヨード染色で初めて「ヨード不染帯」として見つけられことがあります。しかし、全例にヨード染色をすることは不可能です。近年、NBIによる画像強調内視鏡により、食道がんは brownish area として内部の異常血管の密な増生をとらえることが出来るようになりました。内視鏡像はゴルフ場の「緑の芝生の中にあるバンカー」のイメージです。

60代男性
年前に胃がんのために手術を受けています。今回、フォローアップ目的で胃カメラをおこないました。胃を切除すると食道に負担がかかるため、食道がんのリスクが高くなります。そのことを踏まえて慎重に食道を観察しましたが、通常観察では異常は見当たりませんでした。NBI観察では、緑色の食道粘膜像のなかに、わずかに茶色の斑点の領域(brownish area)を認めました。ルゴールを散布すると、同部位に一致してルゴール不染帯が浮かび上がってきました。生検で食道がんと診断されました。

NBI観察の凄いところは、オートマチックに食道がんを見つけてくれるところです。通常観察では、人間がわずかな色調の変化や凹凸などを探しながら隠れているがんを見つけるわけですが、NBI観察では器械が教えてくれるのです。
通常観察で早期の食道がんを見つけるためには、経験や知識が必要ですが、NBI観察では誰がやっても結果は同じです。
実際、NBI観察を経験すると、「最新の器機がサポートしてくれている」という安心感が大きいです。通常観察でチェックした部位がNBI観察ではどうなるのか、より一層、詳細に観察するモチベーションが湧いてきます。

食道がんは、4年間程粘膜にとどまった後に粘膜下層に進展します。その1年後には筋層まで進展する進行がんになると考えられています。食道がんに「診断の遅れ」は許されないのです。

NBI:narrow band imaging

【治療の結果】大学病院で内視鏡治療による粘膜切開・剥離術(ESD)がおこなわれました。手術は無事終了しました。がんは粘膜の最も浅いところ(粘膜上皮)にとどまっていました。

胃がん 生検のタイミング

水曜日, 5 月 1st, 2019

胃潰瘍のサイクル。胃潰瘍が胃がんに変化することはありません。しかし、一見、胃潰瘍の姿で、生検でも良性と診断された「潰瘍性病変」が、潰瘍がはん痕化した時期にもう一度生検するとがんと診断されることがあります。

70代男性
心窩部痛で胃カメラをおこなったところ、胃の出口付近に潰瘍性病変を認めました。他に、胃の真ん中あたりにも2個潰瘍性病変を認めました。生検結果は胃の出口付近のモノが「グループ2」でした。抗潰瘍薬をか月間飲んでもらった後に、もう一度胃カメラをおこないました。潰瘍は完全に閉じて、瘢痕化していましたが、生検で「グループ5(がん)」と診断されました。手術になりました。ちなみに、他の潰瘍は良性でした。

70代男性
タール便が出たため来院されました。胃カメラでは、胃の真ん中に潰瘍性病変を認めました。生検結果は「グループ2」でした。抗潰瘍薬をか月内服後の胃カメラで、潰瘍はん痕部位からの生検で「グループ5(がん)」と診断されました。手術になりました。

この人の患者さんに回目の生検をおこなったのは、胃潰瘍にしてはやや不自然な形をしていたからです。もちろん、回目の生検で「グループ2」であったことも大きな要因でした。
潰瘍のどの場所を生検したら良いかは医学書に書いてあります。潰瘍の周囲の「土手」の内側がベストです。潰瘍底を生検しても、壊死組織しか取れないので、がんの診断はつきません。

活動期の潰瘍は生検で胃がんの診断がつきにくいことは先輩達から教えてもらってきましたが、なかなか、成書で見つけることが出来ません。
・がん細胞が潰瘍の裏側に潜っている(はん痕化した時にがん細胞が表面で出てくる)。
・炎症が強い時期は、病理診断でがんの診断がつけにくい。
などが主な理由のようです。

最も避けなければいけないことは、最初の生検で「良性」と診断されたことで安心してしまうことです。少しでも「怪しい」と感じたら、潰瘍のはん痕期にもう一度生検をおこなう慎重さが必要です

すい臓がん ー10年間の診療を振り返ってー

月曜日, 4 月 1st, 2019

緑色がすい臓です。重さわずか120gです。最近、週間に名のすい臓がんが見つかりました。普段は、年間に名いるかいないか程度なので、とても驚きました。そこで、開院以来10年間の当院のすい臓がん患者さんを調べてみました。

すい臓がん患者さんの総数は11名でした。男性名、女性名です。年令は、39才から85才迄で、平均年令は66才でした。すい臓がんのリスクファクターとして、膵炎の既往、糖尿病、肥満、喫煙、大量飲酒、高脂血症、などが指摘されています。これら11名の中には、アルコール性膵炎の既往のある方が名、MBIが30以上の高度肥満の方が名いらっしゃいましたが、そのほかの方は、これといったリスクファクターが見当たりませんでした。
全員腹部造影CT検査で確定診断がついています。進行度は全員ステージⅣで、腫瘍径が2cm以下の「小膵癌」の方はいらっしゃいませんでした。手術が可能な方はひとりもおらず、かなり病気が進行した時点で見つかったわけです。

最近のすい臓がんの本邦死亡者数は年間千人であり、10年前に比べると約万人も増加しています。10年間で1.5倍に増えたわけです。国立がんセンターの先生は、増えた要因は、①長生きする人が増えたから、②造影CT検査の精度が上がったからと解説されています(ドクターサロン2019月号)。しかし、この10年間に、高齢者が1.5倍も増えたでしょうか? この10年間でCT装置に画期的な進歩があったでしょうか? 答えはいずれも「いいえ」です。

九州がんセンターの先生が興味ある取り組みをされています。早期のすい臓がんを見つけるために、造影CT検査とMRI(MRCP)を両方おこなう人間ドックを始めたのです。しかし、年間やってみて、名もすい臓がんを見つけることが出来ませんでした。その要因として、ハイリスクグループの方がほとんど受診せず、健康志向の高い方の受診が多かったためではないかと考察されています。医師の思い通りには対象者が集まってくれなかったわけです。

一般的に、すい臓がんは発がんから発症まで長い年月を要すると考えられています。しかし、当院で経験した患者さんの中に、すい臓がんと診断されるか月前に腹部造影CT検査を受けていた方がおられます。その時点では、まったくすい臓に異常は無かったのです(念のために、放射線科医に再度確認してもらいました)。発がんから発症、そして進行までの時間経過はまだ詳細にはわかっていません。

ピロリ菌と胃がん、
便潜血検査と大腸がん、
B型肝炎・C型肝炎と肝臓がん、
といった具合に、絶対的なリスクファクターがすい臓がんでは見つかっていないのが現状です。

偽膜性腸炎

金曜日, 3 月 15th, 2019

抗生物質です。抗生物質の投与を受けると、腸内細菌のバランスが崩れます。菌交代現象により異常に増殖したクロストリジウム・ディフィシル菌(嫌気性菌)が産生する毒素(CDトキシン)により腸炎が発症します。大腸カメラで粘膜に白色の丸い斑点(偽膜)が観察されることから、偽膜性腸炎といいます。当院では、過去10年間に人の患者さんを診断しています。

30代女性
副鼻腔炎で抗生物質を投与されました。その後、腹痛、下痢、下血が出現したため、近医を受診。整腸剤等を処方されましたが軽快しませんでした。症状が改善しないため、つのクリニックを次々に受診し、つ目のクリニックとして当院を受診されました。病歴から抗生物質起因性腸炎が偽膜性腸炎に進展していることが予想されました。直ちに大腸内視鏡検査おこなったところ、直腸に偽膜が観察されました。便中のCDトキシン(+)、便の嫌気性菌培養でクロストリジウム・ディフィシルが検出されました。通常の倍量の整腸剤を処方したところ、速やかに症状が改善したため、バンコマイシン(又はフラジール)の投与は見合わせました。

病歴から偽膜性腸炎を来していることが容易に予想されるにもかかわらず、前医で診断に至らなかった理由を幾つか想像してみました。
① 抗生物質起因性腸炎は、抗生物質をやめれば大抵は治るので、詳しく原因を探る必要が無いと判断された可能性。
② 嫌気性菌の培養の備えをしていなかった可能性。通常の培養検査は好気性菌のみを対象としています。嫌気性菌を培養するためには、専用の容器が必要です。
③ フレキシブルに大腸内視鏡検査をする体制が出来ていなかった可能性。
などなど。

当院では、好気性菌の培養だけではなく、嫌気性菌の培養が出来るように常に準備しています。ある程度の便量が採れた場合にはCDトキシンも調べます。さらに、看護師さんの協力の下、浣腸による前処置のみで直腸とS状結腸の大腸内視鏡検査を診察の合間に随時行っています。

失神

日曜日, 3 月 3rd, 2019

10代女性】学校生活の中で、時々、「脳貧血」をおこし、ひどい時には、失神を来すことがあるとのことでお父さんと来院されました。失神で倒れても、怪我はないとのことです。お父さんから、専門医への紹介を依頼されました。

お話を聞きながら、失神で倒れても、怪我したことが無いことから、心因的な要素が大きいのではないか(ヒステリーのひとつ)と判断し、心療内科で診てもらうことを提案しました。しかし、お父さんから、心の不調というより、心臓関係が心配であるとの訴えから、大学病院の循環器内科で診てもらうように紹介状を作成しました。
その結果、『神経調節性失神』と診断され、比較的軽いため、起立調節訓練法の治療が始まりました。数か月トレーニングを続けることによって、すっかり失神発作は影をひそめたとのことです。

神経調節性失神の中で最も多いタイプは血管迷走神経失神です。長時間の立位(あるいは座位)姿勢や下半身の陰圧負荷(排尿・排便など)、あるいは恐怖や痛みなどのストレスが加わった状況で発生します。その時、血圧が一気に下がったり、急に徐脈になったりして、いわゆる「脳貧血」の状態になっているわけです。
軽症では、前駆症状があり、失神までに数秒を要するため、失神による怪我がないようです。
神経調節性失神はトレーニングによって病気を克服することが可能です。図の様に壁に頭と背中とお尻を密着させ、30分間立ったまま静止します。この時、下半身を動かさないようにすることが重要です。

「怪我をしていないからヒステリーだろう」と考えるのは短絡的過ぎたと反省しています。そして、今回一番感じたのは、親の愛情の深さです。お父さんは誰よりもお嬢さんの良き理解者だったのですね。

ヘリコバクターピロリシリーズ(18)  胃マルト(MALT)リンパ腫と除菌治療

金曜日, 2 月 15th, 2019

ピロリ菌、発見!50代女性
数か月前からお腹の張った感じを自覚していました。3週間前から空腹時の心窩部痛が続くために来院されました。胃カメラでは、「多彩な所見」を呈していました。まず、目についたのが、進行胃がんを思わせるような潰瘍です。それとは別に、あちこちに潰瘍はん痕による粘膜のひきつれを認めました。胃粘膜は褪色調の部位と発赤が混在していました。多彩な所見から、「通常の胃がんとは違うな」と感じました。生検の結果、胃マルトリンパ腫と診断されたため、治療目的に総合病院に紹介しました。そこで、ピロリ菌感染の治療に用いる『1次除菌』が実施されました。
2か月後の胃カメラでは、大きな潰瘍は塞がり、著しく改善傾向にありました。しかし、生検で異型リンパ球が採取されました。
半年後の胃カメラでは、大部分の病変が縮小・平坦化しました。生検でも異型リンパ球は認めなくなりました。
1年後の胃カメラは、ほぼ正常の胃にもどっていました。この経過より寛解状態と判断されています。
先日、2年ぶりに元気な姿で来院されました。

胃マルトリンパ腫の90%はピロリ菌感染による慢性胃炎をベースに発生し、ピロリ菌の除菌により60~90%に完全寛解が得られます。ピロリ菌の関与が明確でなかった時代(ほんの20年程前)には、胃切除術を受け、さらに化学療法を受けるのが一般的でした。化学療法は、悪性リンパ腫に準じたメニューだったので、患者さんの負担は大変なものでした。その頃の治療と比べれば、「1週間、除菌の薬を飲むだけで寛解が得られる」なんて、とても素晴らしいことだと思います。医学はドンドン進歩していますね。

ピロリ菌がいない胃マルトリンパ腫でも、一定の割合で除菌治療が奏効することが知られています。除菌薬のひとつクラリスロマイスン免疫修復作用抗腫瘍作用があるためです。現在、わが国では、ピロリ菌陰性または除菌治療が無効だった胃マルトリンパ腫に高用量のクラリスロマイシン単独療法の臨床試験が進められています。良い成績を期待しましょう。

風疹 高抗体価

金曜日, 2 月 1st, 2019

先天性風疹症候群は予防出来ます。

風疹ワクチンは1995年までは、女子のみに実施されていました(現在は男女とも接種)。2006年までは子供の頃に1回打つだけでした(現在は2回接種)。その結果、風疹の抗体を持たない昭和生まれの男性が社会問題になっています。

30代男性(昭和生まれ)】
先日、妊娠を希望するパートナーとして風疹の抗体検査(無料)を受けられました。抗体価(HI法)は2048倍と異常な高値を示しました。発熱、発疹、リンパ節腫脹などの風疹を疑うような症状はありません。

妊娠中に風疹に感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群をおこすことがあります。先天性風疹症候群の赤ちゃんは、様々な障害を持って生まれます。
風疹の抗体価は、陰性(8倍未満)、ボーダーライン(8倍~16倍)、陽性(32倍以上)と判定します。32倍以上あれば、風疹に対する免疫があるため、安心して妊娠できます。
16倍以下であれば、ワクチン接種が望ましいです。

では、2048倍はどういうことなのか。可能性が高いのが、風疹の不顕性感染(あるいは再感染)です。自然感染後の3~10%に、ワクチン接種後の14~18%に再感染が起こりうるのです。再感染は、無症状の事が多く、本人も気付かないのです。その結果、パートナーに風疹を感染させてしまうわけです。

女性が風疹の再感染で妊娠した場合を想定してみましょう。ワクチンも打っているし、症状もないので、まさか、風疹に再感染しているなんて想像もできないでしょう。しかし、ワクチンの効果は永遠ではないのです。母体は再感染でも、胎仔にとっては初感染ですので先天性風疹症候群は発症します。再感染による先天性風疹症候群をまとめた論文では、母体に発疹が出たのは27%、急性期感染の裏付けとなるIgM抗体の陽性率は50%程度と診断が難しいことを物語っています。

結局、この男性はどうすればよいのでしょうか?
① まず奥さんの抗体価を確認する。陽性であれば、妊娠に支障はないです。
② 奥さんの抗体価が陰性又はボーダーラインであれば、ご主人の抗体価が落ち着いてから妊活を再開する方が無難でしょう。

大腸smがん 手術を選択して良かった。

火曜日, 1 月 15th, 2019

大腸粘膜の5層構造初期の大腸癌は内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。
大腸の壁は、内側から、①粘膜固有層 ②粘膜下層 ③固有筋層 (④しょう膜下層) ⑤しょう膜 の5層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。
がんの深さが①までであれば内視鏡治療を選択します。
がんの深さが③④⑤まで及んでいれば(シェーマの黄色のラインより下)外科手術が必要です。
問題は②粘膜下層にがんが及んでいた場合です。

内視鏡治療の結果、(1)(2)いずれかが当てはまる場合は外科的切除を追加します。
(1) 垂直断端が陽性(がんが粘膜下層断端に露出している)
(2) 摘出標本で以下の一因子でも認めた場合
① 粘膜筋板から1,000μm(=1mm)以上
② 脈管侵襲陽性
③ 低分化腺癌、印環細胞癌、粘液癌
④ 浸潤先進部の簇出がグレード2以上(グレードは1~3)

40代男性
数か月前より、時々、排便後にお尻を拭いた時に、血が付着するため来院されました。大腸カメラで12㎜大のポリープを認めました。暗赤色のポリープは表面凹凸不整で、出血しやすく、一見しただけで「がん」を思わせるものでした。ポリープの背が高く深達度が深そうでしたので、切除せずに大学病院に紹介しました。
腫瘍の最深部を観察するための超音波内視鏡検査も腫瘍のピットパターンを観察するための拡大内視鏡検査も決め手となる結果は得られませんでした。最終的には、ご本人の意向で、外科切除が選択されました。その結果、最深部までの距離が5mmのsmがんでした。結果的には、外科切除の適応であり、正しい選択がなされたわけです。

大腸sm浅層がん(最深部まで1mm以下)かsm深層がん(最深部までが1mm以上)か、見分ける手段のひとつとしてピットパターンが用いられています。ピットパターンⅤI(高度不整)ⅤNであれば、sm深層癌と診断出来ます。ただし、今回の様に、鮮明なピットパターンを得ることが難しいことがあります。また、ⅤIで高度不整の判断が非難しい時があります。現在、AIを取り入れることによって、より標準化された深達度診断が研究されています。

抗リン脂質抗体症候群

土曜日, 12 月 15th, 2018

お腹の血管はアーケードを形成しています。40代女性
1週間ほど前から続く上腹部痛のために来院されました。痛みの程度はうずくまるほどの激痛では無いけれど、これまで経験した胃の痛みよりは強い。という感じでした。エコー検査で胆石は無く、胃カメラでは胃潰瘍を認めませんでした。検査の結果を説明している間も、自然に手がお腹に行ってしまっており、痛みの深刻さが伝わってきました。その日のうちに腹部CT検査を受けてもらった結果、腹腔動脈と上腸間膜動脈の起始部での血栓による閉塞が確認されました。どちらもお腹の大事な血管です。閉塞部位を迂回する血管のバイパス手術が施行されました。
当院で採血していた保存血液で「抗カルジオリピン抗体」が陽性と判明したことより、血栓の原因は抗リン脂質抗体症候群だと思います。なお、確定診断を付けるためには12週間以上間隔をおいて再度、測定することが必要です。

抗リン脂質抗体症候群は、血中に抗リン脂質抗体と呼ばれる自己抗体が、様々な部位の動脈血栓や静脈血栓を来す疾患です。脳で起これば、脳梗塞が発症しますし、末梢動脈の閉塞では皮膚潰瘍が、網膜の血栓では視野異常失明を来します。今回、腹腔動脈と上腸間膜動脈の閉塞という非常に大きなトラブルにもかかわらず、内臓に大きな障害が出なかったのは、腹部の動脈がお互いに血流が行き来できる「アーケード」を形成しているためではないかと考えます。
なお、リン脂質抗体症候群は「習慣性流産」の既往が有名ですが、この方の場合、定かではありません。診察した際に、確か妊娠線は無かったと記憶しているので、出産の経験が無いかもしれません。
この病気の原因は不明であり、治療は抗凝固剤(血液をサラサラにする薬)の内服による血栓の予防しかありません。再発率は高いようです。

原発性の抗リン脂質抗体症候群は日本に5,000~10,000人程度いると推定されています。“1万人に1人“というかなりまれな病気です。それだけに、強く印象に残る経験でした。


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