Archive for the ‘院長「医療に関する話」’ Category

家族性地中海熱

水曜日, 6 月 15th, 2022

オリーブ油をふんだんに使った地中海料理!「自己炎症性疾患」と呼ばれる、「自己免疫疾患」に名前は似ているけれど、全く別物の疾患があります。家族性地中海熱も自己炎症性疾患です。
10歳代女性
半年前から、1~2ケ月に1回の頻度で、激しい腹痛が出現しています。発熱はありません。前医では腹痛時の血液検査でCRP(炎症反応物質)が高値であることが指摘されています。今回の腹痛発作で、初めて当院を受診されました。当院でも白血球増多、CRP高値を認めました。来院時には痛みのピークは過ぎており、比較的落ち着いておられました。BMIが19と瘦せ気味で、クローン病を念頭に大学病院で診て頂くことにしました。大学病院で詳しく調べた結果、クローン病は否定的であり、『家族性地中海熱』の亜型の可能性を指摘されました。今後は、腹痛発作時にこの疾患の特効薬であるコルヒチンを内服することで痛みが和らぐか、経過をみていくことになりました。

家族性地中海熱について調べるといろいろ興味深いことが分ってきました。
多くの医師がこの病気を知らないことから診断がつくまでに数年から数十年を要している患者さんが多い。
・発作中は激しい症状が出るのに対し、非発作時は苦痛なく生活が出来るため、周囲の理解が得にくい(さ病と思われがち?)。

最近の消化器病学会の症例報告を紹介します。
20歳代女性。腹痛、下血、発熱でF大学病院に入院。CRP強陽性。最初は、感染性腸炎と診断し、抗生物質を投与するも効果なく、次に潰瘍性大腸炎と診断。メサラジン、プレドニン(なんと60mgも!)、アザチオプリン(免疫抑制剤)を投与するも効果なし。ようやく、家族性地中海熱が鑑別疾患に挙げられ、遺伝子解析をおこなったが、確定診断には至らず。診断的治療でコルヒチンを投与すると、劇的に改善した。診断に至るまでに1年以上を要した(反省の弁はありません)。
20歳代女性。発熱と腹痛。1カ月おきに3回症状が出ている。N大学病院で、感染性腸炎→炎症性腸疾患(クローン病、ベーチェット病)が疑われ、3回目の発作時に遺伝子解析から家族性地中海熱と診断された。コルヒチンが投与され、著効した。早い段階からこの疾患を念頭に置いていたので早期診断につながった(チョッと自慢げ)。

家族性地中海熱は名前の通り地中海沿岸に多い病気ですが、日本にも500名程度の患者さんがいると推定されています。ちゃんと『難病』に指定されています。今回、この患者さんが当院を受診してくださったことで、とても有意義な経験が出来ました。次からは、月に1回起こる腹痛や発熱の患者さんを診たら、家族性地中海熱を鑑別疾患にあげながら、診察しようと思います。

【おまけ】家族性地中海熱とは別に、地中海熱(ブルセラ症)という病気があります。細菌感染が原因です。地中海性貧血(サラセミア)は、グロビン蛋白の先天的な異常による貧血症です。

胃がんの発生から治療までを見届けることが出来ました。

日曜日, 5 月 15th, 2022

胃カメラはこんな感じです。通常は、胃カメラで「すでに出来ている」胃がんを見つけるのですが、今回、今まで何もなかった場所に小さな隆起が出来て、1年後に少し大きく成長し、内視鏡切除によって早期胃がんと判明した患者さんを経験しました。

60才台女性
ヘリコバクターピロリ菌の除菌済の方です。萎縮性胃炎あり。胃がんのハイリスクグループとして、7年前より毎年当院で胃カメラを受けています。2年前の胃カメラまでは異常なかったのですが、昨年の胃カメラで、前庭部に3mm大のなだらかな隆起が出来ていました。生検ではグループ1(炎症粘膜)との診断でした。今年の胃カメラで、それは5mm大のハッキリした隆起(ポリープ)に成長していました。生検で、グループ3(腺腫:良性の腫瘍)と診断されました。大学病院に内視鏡治療をお願いした結果、グループ5(がん)と診断されました。幸い、粘膜内がんであったため、内視鏡治療で完治しています。

胃がんが誕生して胃カメラでわかる大きさに育つまでに平均年かかると言われています。今回の経験はまさにそれを裏付けるものでした。
隆起が大きくなることと並行して、細胞もグループ1からグループ3、そしてグループ5へと進んでいます。がんは内視鏡的に切除され、完治しています。まさに、胃がんの誕生から治療までを見届けることが出来たわけです。
この方は、7年前から毎年きちんと胃カメラを受けておられたことが今回の胃がんの早期発見・早期治療につながったと思います。単なる偶然で見つかったわけでは無いと思うのです。この方のように、何事も強い意志を持って継続することが大切であると思いました。
胃がんの内視鏡治療の場合、10%程度の確率で、別の部位に胃がんが再発します。ですから、これからも定期的な胃カメラが必要です。これもまた大事なことです。

救急搬送

日曜日, 5 月 1st, 2022

毎日、お疲れ様です!先日、待合室で待っているうちに具合が悪くなってしまい、救急車をお願いする場面がありました。

60代女性
数日前から便秘で、前日の浣腸でもごく少量しか排便出来なかったとのことです。来院され、診察を待っている間に気分不良となり坐っていることが出来なくなりました。血圧は90mmHgまで低下しています。聴診上、腸雑音が聞こえません。エコー検査で腹水は無かったので腹膜炎には至っていないものの『急性腹症』と判断し、大学病院に搬送しました。CT検査の結果、腸管穿孔と診断され、緊急手術が施行されました。

救急搬送になった場合、患者さんの命を救うために迅速にことを進めなければいけません。そのために当院では、マニュアルを作成し、医師と看護師と受付の役割分担を決めています。
院長:救急搬送が必要と判断したら、スタッフに伝える。本人・家族に説明し、搬送先の病院に連絡する。紹介状を作成したら119番通報する。救急隊員が到着したら、状況を説明し、救急車内での全身管理の指示(酸素投与の有無、など)をおこなう。搬送が終わったら、待合室の皆さんに、ご協力に対する感謝の気持ちを伝え診療を再開する。
看護師:バイタルチェックや処置(点滴、など)をおこない、患者さんの不安を少しでも軽減するように寄り添う。救急車に同乗する看護師は患者さんの荷物などを帯同する。
受付:待合室にいる他の患者さんに救急車が来ることを知らせ、驚かせないようにする。待合室の椅子を移動してストレッチャーが通れるスペースを確保する。玄関で救急隊員を処置室まで案内する。時間的余裕があれば、家族に会計を済ませてもらう。紹介状を封筒に入れて、救急車に同乗する看護師に渡す。

当院の工夫
①救急対応に必要な人員が把握出来たら、それ以外のスタッフは通常の業務に戻る。そうすることで、必要以上に他の患者さんを待たせないで済むからです。
②受付は玄関で救急隊員の到着を待ち、ストレッチャーで院内へ入るように促す。そうしないと、救急隊員はストレッチャーを玄関先に置いたまま、担架で患者さんを運び出そうとします。担架を使わないことで人手と時間の大きな節約になりますし、何よりも患者さんご自身がストレッチャーでの移動の方が楽です。
③いくつかの病院名を宛名に書いた封筒をあらかじめ用意しておく。紹介状を入れるだけで済みます。
④救急車に同乗する看護師はタクシーチケットを持っていく。搬送先の病院からクリニックに帰ってくる際に使います。
⑤救急搬送マニュアルを各部署に貼っておき、確認しやすいようにしておく。時々、ミーティングで再確認する。

最初からスムーズに出来ていたわけではありません。痛い思いをして、その都度、次回からそこを改めようとやってきた結果、今のマニュアルになりました。

大腸内視鏡検査について

水曜日, 4 月 20th, 2022

当院の特徴のひとつである大腸内視鏡検査について心がけていることにお話しします。まずは、安全と正確ということです。次に心がけていることは「いつでも、誰でも同じ」ということです。そのためには、内視鏡操作をパターン化するように心がけています。

大腸カメラはこんな感じです。スコープの硬度は「0」から「3」の中の「1」にセットします。直腸からS状結腸は、介助の用手圧迫を利用しながら、なるべくスコープが伸びないように挿入する。
S状結腸と下行結腸の境目(SD junction)に届いたら、スコープをストレート化し、介助にS状結腸を挟むように圧迫してもらいながら、SD junctionを乗り越える。
③横行結腸はスコープの引き上げる動作を使って、出来るだけ短縮させておく。
④肝彎曲部(横行結腸と上行結腸の境目)にスコープが到達したら、スコープの硬度を「0」にし、右側腹部を圧迫してもらいながら、スコープを上行結腸へ挿入する。この際に「引きながら押す」という感覚が大事です。「引く」とは吸引やスコープを引き上げる操作を使って大腸の管腔を手前に手繰り寄せるのです。その流れの中で、スコープを上行結腸に落とし込む(押す)のです。
⑤上行結腸が「Z」の字のように折れ曲がっている場合は、左側臥位などの体位変換を活用して盲腸まで挿入する。
⑥必ず虫垂開口部を観察する。
このパターン化された内視鏡操作を、日々、誰にでも同じように繰り返すことで、皆様に安定した検査を提供できるものと考えています。

心と体を整え、いつでも最善の検査が提供できるように心がけています。

2021年を振り返って⑥(当院ではめったに遭遇しない病気編)

月曜日, 3 月 28th, 2022

昨年も大勢の方に当院をご利用頂き有難うございました。2021年を自分なりに振り返ってみようと思います。

悪性リンパ腫
高血圧、糖尿病で通院中。体調不良にて、採血をおこなうと、糖尿病の急なコントロール悪化のみならず、貧血、低栄養、炎症反応陽性を来しており(LDHは正常範囲)、大学病院で悪性リンパ腫と診断されました。

慢性骨髄性白血病
高脂血症で通院中。血液検査で汎血球減少症を呈していたため大学病院を受診し、診断がついています。白血病は、白血球が減る場合もあるのですね。

下垂体腫瘍
めまいが2か月近く続き、耳鼻科受診するも改善しないため、頭部MRIを総合病院にお願いしました。その結果、下垂体腫瘍と診断され、大学病院で手術(Hardyの手術)を受けられました。めまいと下垂体腫瘍の因果関係はわかりませんでした。

劇症型溶血性レンサ球菌による感染症を人食いバクテリアと呼びます。結節性紅斑(発熱を伴う皮下に圧痛を伴う発赤調の結節が生じる脂肪織炎)
糖尿病で通院中。発熱と、手の甲やくるぶしに発赤を伴った皮膚のなだらかな膨隆を認めたため来院されました。病変部の圧痛はさほど認めませんでしたが、すぐに大学病院救急部に診察をお願いしました。その結果、結節性紅斑と診断されています。細菌の侵入経路は不明でした。すぐに救急部を受診してもらったのは、ビブリオ・バルニフィカスによる壊死性筋膜炎や『人食いバクテリア』と言われる劇症型溶血性レンサ球菌感染症が頭をよぎったからです。

2021年を振り返って⑤(腹痛編)

金曜日, 3 月 18th, 2022

昨年も大勢の方に当院をご利用頂き有難うございました。2021年を自分なりに振り返ってみようと思います。

腹痛の診断は難しいです。腸重積
腹痛、嘔気、嘔吐で来院されました。エコー検査で通常はガスで見えない小腸がケルクリング襞も含めてしっかり観察できました。「見えないものが見える」ことも異常です。腸閉塞と診断し、大学病院に紹介しました。CT検査で腸閉塞の原因は、腸重積と診断がつきました。緊急手術がおこなわれています。

虫垂炎
① 症状が嘔気・嘔吐のみの方がいらっしゃいました。右下腹部(マックバーニー圧痛点)を押さえると痛みがあることから診断がつきました。
② 発熱を認めたため、車の中での診察となっています。ドア越しに右下腹部(マックバーニー圧痛点)を押さえると痛みがあることから診断がつきました。新型コロナウイルス感染症が終息し、通常の診療が出来る世の中に早くなって欲しいものです。

上行結腸癌
主訴は心窩部痛と腹満感です。しかし、症状が出たり消えたりしたため、初診から5か月後と7か月後に来院され、初診から診断までに7か月かかりました。初回受診時に上部内視鏡検査で胃に異常が無いことを確認しました。しかし、便秘、下痢、下血、等の下部消化管の症状が無かったことと、同時期にたまたま受けた大腸がん検診(便潜血検査2回)で異常を指摘されなかったことで大腸の病気をイメージすることが出来ませんでした。小球性の貧血があることとCRPが陽性であったことからCT検査を受け、上行結腸に腫瘤があることが判明しました。大学病院で上行結腸癌と診断が付きましたが、すぐに手術できる状況ではなかったため、抗がん剤の投与を受けておられます。

2021年を振り返って④(肝・胆道系編)

火曜日, 3 月 8th, 2022

昨年も大勢の方に当院をご利用頂き有難うございました。2021年を自分なりに振り返ってみようと思います。

転移性多発肝腫瘍

嘔気と右季肋部痛を主訴に来院され、エコー検査で肝臓に多発する腫瘤を認めました。大学病院での精査の結果、神経内分泌腫瘍を含んだ前立腺がんが肝臓へ多発転移したものでした。季肋部痛を訴えていたのは、腫瘍で肝臓の被膜が過伸展したためと思われます。

肝臓と胆管と膵管の関係総胆管結石

腹痛を主訴に来院されました。3年前に胆石の手術を受けておられます。血液検査で肝胆道系酵素の異常高値を認めました。大学病院でCT検査を受け、総胆管結石と診断がついています。内視鏡治療が施行されています。

レンメル症候群

心窩部痛と発熱を主訴に来院されました。血液検査で肝胆道系酵素と膵酵素の異常高値を認めました。大学病院でCT検査を受け、レンメル症候群と診断がついています。レンメル症候群は総胆管と主膵管が合流し十二指腸に通じるファーター乳頭のすぐそばに憩室がある場合、傍乳頭憩室に食物残渣が充填されることで、胆汁や膵液の流れが悪くなることで症状が引き起こされます。
*レンメルはLemmelと書きます。上から書いても、下から書いても同じです。

尿中トリプシノーゲン2(APチェック)

急性すい炎を診断するために迅速キット(尿中トリプシノーゲン2)を使っています。下痢を伴わない腹痛で、血液検査で白血球が増えていて、尿中トリプシノーゲン2が陽性であれば、急性すい炎を疑います。昨年2名の方に陽性反応が出たため、救急病院を紹介しましたが、いずれもCT検査で急性すい炎は否定されました。尿中トリプシノーゲン2は精度に多少問題がありそうです。

2021年を振り返って③(ピロリ菌編)

土曜日, 2 月 26th, 2022

昨年も大勢の方に当院をご利用頂きました。有難うございました。自分なりに2021年を振り返ってみようと思います。

鏡検でピロリ菌は見つかります。1次除菌成功するも2年後に感染確認
2年前に1次除菌をおこない、尿素呼気試験で除菌成功を確認した方です。今回、便中ピロリ抗原が陽性と判明し、実は、1次除菌が不成功だったことが判明しました。除菌成功と診断された方の1~2%にこのような間違った判定が起こりえます。2次除菌をおこない、尿素呼気試験で除菌出来ていることを確認しました。1年後に便中ピロリ抗原でも確認する予定です。より正確な除菌判定を行うため、最近は、除菌判定を尿素呼気試験と便中ピロリ抗原の2種類でおこなうようにしています。

血中ピロリ抗体 9.0(ボーダーライン)
ピロリ抗体は10以上が陽性(感染/既往感染)です。10未満が陰性ということになりますが、当院では3~10の間は『ボーダーライン』として扱っています。確実に陰性と言えるのは3未満です。この方は、鏡検法でピロリ菌を認めなかったので、最終的にはピロリ菌陰性と判断しました。ボーダーラインの方は、過去のピロリ菌感染で、現在は抗体価が徐々に低下してきている時期と考えられます。

3次除菌成功
早期胃癌の内視鏡治療後に、胃がん再発予防目的でピロリ菌の除菌治療を受けられました。1次除菌、2次除菌ともに不成功に終わったため、3次除菌を受けられました。3次除菌はパリエット(40mg)とアモリン(2g)(分4)およびグレースビット(200mg)(分2)を1週間服用してもらいました。後日、尿素呼気試験で除菌出来たことを確認しています。

2021年を振り返って②(大腸カメラ編)

水曜日, 2 月 16th, 2022

昨年も大勢の方に胃・大腸内視鏡検査を受けて頂きました。有難うございました。自分なりに2021年を振り返ってみようと思います。

3機種体制
これまでは、標準タイプ(CF-H260AI)と細径タイプ(PCF-PQ260I)の2種類のカメラで検査をおこなってきましたが、2021年にこれら2機種の中間に位置するPCF-H290Iを新たに採用しました。この機種は、背が高くて痩せ型の方に特に威力を発揮します。一般的に腸の長さは身長に比例しますので、背が高い人は腸が長いです。しかも、痩せ型の方は、狭いお腹の中に長い腸がおさまっているわけですから、スコープには、柔らかいことと直進性に優れていることが求められます。これらの相反する機能を兼ね備えているのがPCF-H290Iです。2機種から3機種に増やしたことで、検査をより苦痛なく安全に行えるようになりました。

大腸粘膜の5層構造です。直腸粘膜内がんでリンパ管浸潤陽性
直腸ポリープをポリペクトミーした結果、粘膜内がんでリンパ管浸潤を認めるという病理結果が届きました。リンパ管浸潤があれば、原則、リンパ節郭清を含めた追加の手術が必要です。しかし、粘膜内がんがリンパ節転移することは無いというのも、大原則です。この矛盾する2つの結果をどのように扱えば良いのか難しい問題です。
結論から申しますと、大学病院でリンパ節郭清を伴う低位前方切除術が施行されました。リンパ節転移は1つも認めなかったため、『ステージ0』と診断されています。
後日、病理の先生に一連の経過について意見を伺ったところ、病理医は『陰性』という結果は信用しない。信用するのは『陽性』だけと答えて頂きました。標本を薄切して作ったプレパラートにがん細胞が無かった(陰性)としても、切り出していない部位にがん細胞があるかもしれません。ですから、リンパ節転移は無かったと判断するのではなくて、標本を作ったところにはがん細胞が無かったと考えるわけです。この患者さんの場合、確かな事実は切除したポリープ(がん)に『リンパ管浸潤があった』ということだけです。ですから、「リンパ節転移が無かったのなら、結果的には追加の手術はしなくても良かった。」なんて後悔する必要はないのです。今回、病理の先生の考え方が聞けてとても勉強になりました。

大腸smがん
直腸に2cm大の亜有茎性のポリープを認めました。生検でグループ5(がん)が確認されました。内視鏡治療の適応ではないと判断し総合病院を紹介しました。その後、外科的切除術を受けておられます。がんの深達度は粘膜下層の深いところ(1,000μm以上)まで浸潤していました。それでも、リンパ節転移は無かったので、「ステージ0」でした。抗がん剤治療も不要です。良かったですね。

直腸カルチノイド
直腸に「粘膜下腫瘍」の形態を呈した5mm大の隆起を認めました。生検の結果、カルチノイドと診断されました。総合病院で内視鏡治療が施行されています。

直腸粘膜脱症候群
排便時間が長かったり、排便時にいきんでしまう習慣が契機となり、直腸粘膜の形態変化を起こしてしまう疾患です。組織学的には腺維筋症を認めます。内視鏡所見では、潰瘍型、平坦型、隆起型など、外観は多彩です。
①肛門部に分葉上のポリープとして認められた方がいました。生検で本疾患と診断がつきました。排便指導をおこないました。
②隆起型の直腸粘膜脱症候群を来していた方が、3年間の排便習慣の改善の成果を見ようと大腸内視鏡検査を受けに来られました。今回、3年前にあった肛門部の隆起は消失していました。

2021年を振り返って①(胃カメラ編)

日曜日, 2 月 6th, 2022

昨年も大勢の方に胃・大腸内視鏡検査を受けて頂きました。有難うございました。自分なりに2021年を振り返ってみようと思います。

観察の工夫
胃カメラの際に、患者さんに協力してもらうことで、より詳細に観察出来ることがあります。内視鏡学会が主催する教育講演会などで知り、さっそく当院でも取り入れました。
①食道胃接合部は、患者さんに大きく息を吸ってもらって止めると、見たい所が良く広がって観察が容易になります。
②胃体上部大湾のひだが送気しても充分に伸展しない場合、患者さんに顔は横を向いたまま、お腹を上に向いてもらうと、胃が体の一番上に来るためにひだが良く伸びます。
今更という内容ですが、良いことはドンドン取り入れていこうと思います。

微小胃がん(5mm以下のがん)
体上部後壁の小さなビランでした。チョッと血が付いていたので気になって生検したところ、グループ2でした。数ヵ月後、再度、同じところを生検すると、今度はグループ5(がん)と診断がつきました。大学病院で内視鏡治療を受け、完治しています(粘膜内がん)。

毛細血管拡張症による胃出血
軽度の貧血の精査のために胃カメラをおこなった際に、直径5mm程度の赤い斑点を認めました。近づいて観察すると、毛細血管の固まりが観察されました。その周囲はやや白い粘膜になることが多く「日の丸紅斑」と言われています。送気による過伸展でも容易ににじみ出るような出血を来しました。これが、貧血の原因だったわけです。大学病院で、アルゴンプラズマによる粘膜焼灼術を受け完治しています。

胃マルトリンパ腫
胃がん検診で発見されました。数か月前から胃の重い感じがあったため、検診を受けられました。胃マルトリンパ腫の主な病因はピロリ菌感染です。ですから、ピロリ菌の除菌でマルトリンパ腫の大きな治療効果が得られます。この方の治療は総合病院にお願いしましたが、ピロリ菌の除菌で寛解しました。

たたみ目食道粘膜がん(深達度:粘膜筋板m3)
食道をNBIに切り替えて観察していて見つかりました。通常観察では気が付いていませんでした。青緑の視野に中にぽつんと茶色のスポットが浮かび上がっていたのです。さらにルゴールを散布してみると、病変部に一致するルゴール不染帯が浮かび上がりました。この時、偶然に食道の蠕動運動で生じる「畳目ひだ」がほんの数秒間生じました。畳目ひだがいつ生じるかなんて分りません。検査中一度も出ないことの方が多いです。正常粘膜には入っている畳目ひだが病変部には入っていない決定的瞬間を写真に収めることが出来ました(写真参照)。この現象は、がんが粘膜筋板に達していることを意味します。実際、大学病院で内視鏡治療を受けた結果も、がんの深さは粘膜筋板(m3)と診断されました。説得力のある内視鏡写真を紹介状に添えることが出来て良かったです。画面3時方向の白い所が病気です。そこだけたたみ目ひだがありません。


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