Archive for the ‘院長「医療に関する話」’ Category

線虫によるがん検診

金曜日, 6 月 4th, 2021

先日、線虫によるがん検診で陽性と診断された方が、当院で胃と大腸カメラを受けれました。幸いにも、がんは見つかりませんでした。
線虫ってがんの匂いが好きなんです!
線虫はがん患者さんの尿を好きな匂いと判断し、匂いの方向に集まっていきます(嫌いな匂いの場合は匂いのもとから離れていきます)。その感度は95%程度と非常に高いものです。15種類のがん(食道、胃、大腸、肝臓、胆のう、胆管、すい臓、前立腺、肺、乳房、子宮、卵巣、腎臓、膀胱、口腔・咽頭)で確認されています。さらに、驚くべきことに、ステージ0またはⅠの早期がんであっても、その感度は85%とほとんど低下しません。一方、腫瘍マーカーのCEAやCA19-9のステージ0またはⅠでの感度は15%程度であり、その差は歴然としています。がん患者さんの術前と術後で線虫のがん検診をおこなうと、75%の方で、術後に陽性指数が低下しています。また、がんの再発した患者さんでは、陽性指数が高くなっています。このことから、がん治療の経過観察の指標になる可能も秘めています。

現在、がんの種類を特定できる線虫を開発中で、これが完成すれば、がん検診は大きく変わることでしょう。

現時点では、東京都福岡市(中央区)に事務所があり、検査を希望する方は採尿後数時間以内の尿を持参するようになっています。九州在住の方であれば、博多駅のトイレで採尿すれば大丈夫ですね。

今回、線虫によるがん検診の2次検査として胃カメラと大腸カメラをおこなったわけですが、いつもよりプレッシャーを感じました。胃がん検診であれば、胃透視で病変の部位と形が分かっていますので、胃カメラを始める前に、心の準備が出来ています。大腸がん検診は便潜血陽性を指摘された方に大腸カメラをおこないますが、大腸がんが見つかる確率は5%程度です。一方、線虫陽性の場合、がんが見つかる可能性がかなり高くなります。そのうえ、早期がんの可能性もあるわけですから、いつも以上に慎重に観察するようになります(本当は、すべての方の同じように対応しなければならないのですが・・・)。

私は、がんに強い恐怖心を持っている方や、画像診断では見つからないけど症状からがんが疑われる方には、線虫によるがん検診の利用を提案しています。費用は12,000円程度(税込み)です。

【ここからは私見です】
線虫によるがん検診が、その優れた精度ににもかかわらず、普及のスピードがイマイチな印象です。一番の要因は、保険収載されていないことでしょう。12,000円を高いと判断すれば、検査をためらいます。また、既存の健診機関は簡単に線虫によるがん検診を採用できない事情があると思います。胸部レントゲン撮影や胃透視や腫瘍マーカーを受ける方が大幅に減少するかも知れないからです。さらに、線虫の開発者が自ら検査会社を設立したことも普及しない要因のひとつかもしれません。医療機関や検査会社が入り込む余地が無いからです。非常に優れた検査法なので、いずれは、がん検診の中核を担う可能性があるのですが、もうしばらく時間がかかりそうです。

令和2年を振り返って(内視鏡関連)

日曜日, 1 月 17th, 2021

大腸ポリープ大腸ポリープ(切除)大腸ポリープ(クリップ縫合)1. ポリペクトミー後出血のまとめ
令和2年の初めに開院以来11年間(平成21年~令和1年)の全ポリペクトミー症例を見直しました。1,295名の方にポリペクトミーをおこなったうち、22名の方にポリペクトミー後の出血を来していました(1.7%)。
これまで、患者さんにポリペクトミーの説明をする際に、「まれにポリペクトミー後に出血することがあります。」と説明してきましたが、当院の成績はどれぐらいなのだろうと、いつも気になっていました。不都合なデータこそきちんと提示することが大切であると考え、ポリペクトミー症例をすべて見直しました。
患者さんの背景や、ポリープの特徴、ポリペクトミー後の縫合クリップの数、出血までの時間(日にち)、出血部位の内視鏡観察の状況、等を検討しました。また、これらを、前半6年と後半5年に分けて比較してみました。
そして、興味深い結果が二つ見つかりました。
ひとつは、出血していた部位はクリップとクリップの間ばかりではなく、一番外のクリップの外側からのことも時々あったことです。この結果を踏まえ、現在は、念のために、更にもう1本、外側にクリップをかけるように心掛けています。
もうひとつは、出血の頻度を前半6年間と後半5年間で比べると、後半5年間の方が低くなっているのですが、これと相応するように、前半6年間のクリップの本数(1個のポリペクトミーに対して)よりも後半5年間の方が多くなっていました。やはり、クリップは十二分にかけておくべきだと再確認した次第です。(*詳細は令和2年2月のブログに掲載しています。)

2. 画像ファイリングシステムの向上
オリンパス社の内視鏡画像データをコニカミノルタ社の画像ファイリングシステムに移す際に、ワンクッション器械が介在していたため、どうしても、画像が劣化していました。しかし、令和2年より、ダイレクトに画像を送るソフトを導入し、観察時と同じレベルの画像を保存できるようになりました。その結果、患者さんへの説明に使用する写真も鮮明になり、自分自身もストレスなく画像を見直すことが出来るようになりました。

3. 細径内視鏡(経口)の採用
これまでは、直径9mmの内視鏡を使っていたのですが、令和2年より直径5mmの細径内視鏡を取り入れました。細くても視界は良く、明るくクリアに観察出来ます。患者さんにとっては、内視鏡検査に対する恐怖感がより一層軽減できると思います。

令和2年はソフト面でもハード面でも内視鏡検査が一層充実した年であったと思います。

食道裂孔ヘルニアの手術

水曜日, 5 月 27th, 2020

胃の一部が横隔膜の上に来てしまっています。80代女性】数年前から食後に心窩部痛を自覚しておられました。ここ2,3カ月は特に症状が強くなり、食事の量も減ったためか5kgの体重減少も来していました。近医で胃カメラを受けましたが『異常なし』との診断でした。腹部の診察では特に異常所見は認めませんでした。腹部エコー検査でも異常は見いだせず、すい臓疾患を疑い、CT検査を総合病院に依頼しました。その結果、胃の2/3が横隔膜より頭側に位置する食道裂孔ヘルニアと判明しました。症状が深刻であることと、ご本人の希望も考慮した上で、インターネットで手術例の多い病院を探し出し、外科的整復術をお願いしました。

手術は、腹腔鏡下で胃を縦隔内から腹腔内に引き戻した後に、横隔膜の食道裂孔部分を縫合し、また、逆流防止のために、噴門部(胃の入り口)の形成術がおこなれました。術後、食後の心窩部痛は消え、元気に退院されたとの連絡を頂きました。

食道裂孔ヘルニアやそれに付随する逆流性食道炎は日々の診療で度々出会いますが、手術を必要とする患者さんにお会いしたのは今回が初めてでした。成書には、通過障害、胸痛、圧迫性呼吸障害を認める場合は手術も考慮するべきと書かれています。胃が丸ごと胸腔内にある場合は、手術の絶対的適応となります。

今回、教訓になったのが、前医での胃カメラで『異常なし』との診断だった点です。あまりにもヘルニア孔が広すぎて、胃カメラで見る限りでは、胃の形に異常が無かったのでしょうね。残念ながら、当院で胃カメラをしなかったので詳細はわかりませんが、切歯から噴門までの距離(通常は45cm程度)がどうなっていたのか、食道は屈曲していなかったのか気になるところです。
もう一点は、こういった良性の疾患の手術適応は、癌と違って、どうしても曖昧になりがちです。症状を緩和する内科的治療で良いのか、手術に踏み込むのか、最終的判断は、患者さんご自身の意思が尊重されると思います。クリニックが出来ることは、手術の選択肢もあることを伝え、ご希望なら適切な病院に紹介するということになると思います。

【追記】結果論になりますが、この症例は、胸部レントゲン写真を撮れば、簡単に診断がついたと思います。ただし、心窩部痛で胸部レントゲンを撮るのは実際は難しいことです。

Colitic cancer(炎症性腸疾患由来の大腸がん)

水曜日, 4 月 1st, 2020

「お腹痛い」炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎では大腸がんのリスクが高くなることが知られています。

70代女性
40年前から潰瘍性大腸炎を患っておられました。ここ数年は寛解状態が続いていたのですが、大腸カメラを希望され2年ぶりに来院されました。大腸カメラで、横行結腸に1cm大の扁平な隆起を認め、周囲の炎症性粘膜とは印象が違っていました。生検で大腸がんと診断されました。

言葉の区別
通常の大腸がんは、colon cancerと英語表記しますが、IBD由来の大腸がんはcolitic cancer と表記します。大腸炎(colitis)に由来するがん(cancer)という意味なのでしょう。

頻度
IBD患者さんの大腸がんリスクは、一般の人と比べて1.6から2倍と言われています。罹患10年で1%、20年で2%、20年以上で5%の発症率と言われています。

発癌のメカニズム
IBD由来の大腸がんは炎症性発がんであり、この点が通常の大腸がんと大きく異なります。慢性の炎症をベースに発がんするものには、ピロリ菌感染による慢性胃炎に出来る胃がんや、ウイルス性慢性肝炎に出来る肝臓がんなどが挙げられます。

治療方針
以前は、IBD由来の大腸がんは『全大腸切除』が一般的でしたが、最近では、内視鏡的粘膜切除が適応されることも可能となってきました。この方は、大腸全摘出術が施行されています。

IBD由来の大腸がんの知識はありましたが、経験したのは初めてでした。今回の経験を今後の診療に生かしていこうと思います。

ポリペクトミー後出血(後半)

日曜日, 2 月 16th, 2020

開院以来(11年間)1,295名のポリペクトミーをおこなってきました。そのうち、22名にポリペクトミー後の出血を来しました(1.7%)。

出血状況
出血までの日数は平均1.9日(3時間後~4日後)であり、ポリペクトミー後の2~3日間は安静が重要であることを再認識しました。
22名中20名にクリップによる止血術をおこなっています。うち3名は夜間の対応であったため、近隣の総合病院で止血術をおこなってもらいました。感謝の気持ちで一杯です。
当院で止血術をおこなった17名についてさらに検討してみました。
観察時に凝血塊が付着しているものの止血状態であったものが10名、にじみ出る様な出血を来していたものが7名、湧き水様の出血を認めたものが1名おられました(重複あり)。ですから、ポリペクトミー後出血は出来るだけ早急に内視鏡検査をおこない、出血部位を観察することが必要であると思います。
出血した内視写真をもう一度丹念に見ていくと、凝血塊の場所がクリップとクリップの間よりもクリップの列の外に位置してことが時々見られることに気付きました。クリップをかける時に今までのイメージよりより長い距離の縫合が必要なのかもしれません。最近は、「これで十分」と思った手前に、念のためにもう1本クリップをかけるようにしています。

経時的な検討
2009年~2014年前期2015年~2019年後期と設定して、検討してみました。
2017年にコールドポリペクトミーを取り入れたことでポリペクトミーの件数は大幅に増えました。しかし、コールドポリペクトミーを除いた通常のポリペクトミー数は前期が75名(年間)に対して後期は77名(年間)と大きな変化はありません。
一方、前期のポリペクトミー後出血の頻度が2.5件(年間)に対して、後期は1.6件(年間)と減少しています。その一因として、止血予防にクリップをかける本数が、前期では平均1.3本であったのに対し、後期では2.6本に増えていることが関係していると思います。
ポリペクトミー後に十分に止血確認をおこない、必要に応じて止血処置をすることで、ポリペクトミー後の出血を減らすことが出来たという報告があります(兵庫医大、2018年)。予防的クリップが終了した後も丁寧に観察して、念のための「もう1本」のクリップを打つことでポリペクトミー後出血がもっと減ると信じています。

e3839de383aae383bce38397efbc91生食を局注しポリープを浮かせます。通電しながらスネアで切除します。傷口をクリップで縫合します。

ポリペクトミー後出血(前半)

日曜日, 2 月 9th, 2020

開院以来(11年間)1,295名のポリペクトミーをおこなってきました。そのうち、22名にポリペクトミー後の出血を来しました(1.7%)。

①患者さんの背景

22名の平均年齢は58才、男女比は12:10でした。最も若い方は20才、最高齢者は82才です。
男性(12名)の平均BMIは26でした。女性(10名)の平均BMIは21でした。男性の場合、肥満気味の方が多いようです。
出血に影響する血圧や動脈硬化の疾患の有無について調べました。
降圧剤を内服中の方が9名、高脂血症の治療中の方が2名います。糖尿病の方はいません。他、肝硬変症1名、透析中の方が1名でした。
不整脈(心房細動)に対して抗凝固剤を内服されている方が1名いました。

②ポリープの特徴

切除したポリープの大きさは平均7.5mmでした(4~20mm)。ポリープの形は、有茎性(3名)、亜有茎性(3名)、無茎性(15名)、表面隆起型(1名)でした。ポリープの部位は、S状結腸が9名、直腸が8名、横行結腸が6名でした(1名に2か所からの出血あり)。S状結腸は屈曲が強く、良好な視野が確保しにくいことが一因と思われます。直腸と横行結腸は意外な印象でした。いずれのポリープにもがんは認めませんでした。

手技に関する検討

ポリープ切除をおこなった際には、後出血の予防のためにクリップによる創部の縫合をおこなっています。予防的クリップは、平均1.8個(0~4個)でした。コールドポリペクトミー後の出血が1名おられましたが、コールドポリペクトミーの場合は予防的クリップおこなっていません。1.8という数字は意外に少ない印象でした。切除面が広い場合、クリップの本数は必然的に増えますので、切除面の広さと出血はそれ程関係ないようです。

無茎性のポリープ(8mm)です。生食を局注しポリープを浮かせます。通電しながらスネアで切除します。傷口をクリップで縫合します。

大腸粘膜内がん 

土曜日, 6 月 1st, 2019

大腸粘膜の層構造です。最近、大腸のポリープ切除(ポリペクトミー)をおこなった結果、ごく初期の大腸がん(粘膜内がん)だった方が人続きました。ポリペクトミーでがんは完全に取り切れていますので、追加の治療は必要ありません。

70代男性
数か月前に当院でポリペクトミーをおこなっています。個切除したのですが、まだいくつか残っていたため、追加のポリペクトミーをおこないました。12mm大のポリープが粘膜内がんでした。
70代女性
肛門の違和感のため大腸カメラをおこなったところ、S状結腸に15mm大のポリープを認めました。ポリペクトミーをおこなったところ、粘膜内癌でした。

大腸の壁は、内側から、①粘膜固有層 ②粘膜下層 ③固有筋層 (④しょう膜下層) ⑤しょう膜 の層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。
通常のポリペクトミーでは、②粘膜下層の深いところで切除されます(図の黄色いラインのすぐ上)。切除ラインは決して③固有筋層には入りません。切除したポリープを顕微鏡で観察し、がんが粘膜固有層に留まっていれば、「粘膜内がん」です。
がんが側方、垂直方向共に切除断端から確実に離れていることも重要です。
当院がいつもお願いしている病理の先生は、粘膜内がんであっても、「smがん」と同様に
・がんの分化度
・脈管侵襲の有無(リンパ管、脈管にがん細胞が無いか)
・浸潤先進部の族出(budding)(がん細胞のばらけ具合)
を詳しく検討してくれます。詳細な検討をすることで患者さんの安心度が増すと思うのです。いつも、頭が下がる思いです。

食道がんとNBI

水曜日, 5 月 15th, 2019

ゴルフ場のバンカー内視鏡検査において、早期の食道がんは通常観察では見つかりにくく、ヨード染色で初めて「ヨード不染帯」として見つけられことがあります。しかし、全例にヨード染色をすることは不可能です。近年、NBIによる画像強調内視鏡により、食道がんは brownish area として内部の異常血管の密な増生をとらえることが出来るようになりました。内視鏡像はゴルフ場の「緑の芝生の中にあるバンカー」のイメージです。

60代男性
年前に胃がんのために手術を受けています。今回、フォローアップ目的で胃カメラをおこないました。胃を切除すると食道に負担がかかるため、食道がんのリスクが高くなります。そのことを踏まえて慎重に食道を観察しましたが、通常観察では異常は見当たりませんでした。NBI観察では、緑色の食道粘膜像のなかに、わずかに茶色の斑点の領域(brownish area)を認めました。ルゴールを散布すると、同部位に一致してルゴール不染帯が浮かび上がってきました。生検で食道がんと診断されました。

NBI観察の凄いところは、オートマチックに食道がんを見つけてくれるところです。通常観察では、人間がわずかな色調の変化や凹凸などを探しながら隠れているがんを見つけるわけですが、NBI観察では器械が教えてくれるのです。
通常観察で早期の食道がんを見つけるためには、経験や知識が必要ですが、NBI観察では誰がやっても結果は同じです。
実際、NBI観察を経験すると、「最新の器機がサポートしてくれている」という安心感が大きいです。通常観察でチェックした部位がNBI観察ではどうなるのか、より一層、詳細に観察するモチベーションが湧いてきます。

食道がんは、4年間程粘膜にとどまった後に粘膜下層に進展します。その1年後には筋層まで進展する進行がんになると考えられています。食道がんに「診断の遅れ」は許されないのです。

NBI:narrow band imaging

【治療の結果】大学病院で内視鏡治療による粘膜切開・剥離術(ESD)がおこなわれました。手術は無事終了しました。がんは粘膜の最も浅いところ(粘膜上皮)にとどまっていました。

胃がん 生検のタイミング

水曜日, 5 月 1st, 2019

胃潰瘍のサイクル。胃潰瘍が胃がんに変化することはありません。しかし、一見、胃潰瘍の姿で、生検でも良性と診断された「潰瘍性病変」が、潰瘍がはん痕化した時期にもう一度生検するとがんと診断されることがあります。

70代男性
心窩部痛で胃カメラをおこなったところ、胃の出口付近に潰瘍性病変を認めました。他に、胃の真ん中あたりにも2個潰瘍性病変を認めました。生検結果は胃の出口付近のモノが「グループ2」でした。抗潰瘍薬をか月間飲んでもらった後に、もう一度胃カメラをおこないました。潰瘍は完全に閉じて、瘢痕化していましたが、生検で「グループ5(がん)」と診断されました。手術になりました。ちなみに、他の潰瘍は良性でした。

70代男性
タール便が出たため来院されました。胃カメラでは、胃の真ん中に潰瘍性病変を認めました。生検結果は「グループ2」でした。抗潰瘍薬をか月内服後の胃カメラで、潰瘍はん痕部位からの生検で「グループ5(がん)」と診断されました。手術になりました。

この人の患者さんに回目の生検をおこなったのは、胃潰瘍にしてはやや不自然な形をしていたからです。もちろん、回目の生検で「グループ2」であったことも大きな要因でした。
潰瘍のどの場所を生検したら良いかは医学書に書いてあります。潰瘍の周囲の「土手」の内側がベストです。潰瘍底を生検しても、壊死組織しか取れないので、がんの診断はつきません。

活動期の潰瘍は生検で胃がんの診断がつきにくいことは先輩達から教えてもらってきましたが、なかなか、成書で見つけることが出来ません。
・がん細胞が潰瘍の裏側に潜っている(はん痕化した時にがん細胞が表面で出てくる)。
・炎症が強い時期は、病理診断でがんの診断がつけにくい。
などが主な理由のようです。

最も避けなければいけないことは、最初の生検で「良性」と診断されたことで安心してしまうことです。少しでも「怪しい」と感じたら、潰瘍のはん痕期にもう一度生検をおこなう慎重さが必要です

すい臓がん ー10年間の診療を振り返ってー

月曜日, 4 月 1st, 2019

緑色がすい臓です。重さわずか120gです。最近、週間に名のすい臓がんが見つかりました。普段は、年間に名いるかいないか程度なので、とても驚きました。そこで、開院以来10年間の当院のすい臓がん患者さんを調べてみました。

すい臓がん患者さんの総数は11名でした。男性名、女性名です。年令は、39才から85才迄で、平均年令は66才でした。すい臓がんのリスクファクターとして、膵炎の既往、糖尿病、肥満、喫煙、大量飲酒、高脂血症、などが指摘されています。これら11名の中には、アルコール性膵炎の既往のある方が名、MBIが30以上の高度肥満の方が名いらっしゃいましたが、そのほかの方は、これといったリスクファクターが見当たりませんでした。
全員腹部造影CT検査で確定診断がついています。進行度は全員ステージⅣで、腫瘍径が2cm以下の「小膵癌」の方はいらっしゃいませんでした。手術が可能な方はひとりもおらず、かなり病気が進行した時点で見つかったわけです。

最近のすい臓がんの本邦死亡者数は年間千人であり、10年前に比べると約万人も増加しています。10年間で1.5倍に増えたわけです。国立がんセンターの先生は、増えた要因は、①長生きする人が増えたから、②造影CT検査の精度が上がったからと解説されています(ドクターサロン2019月号)。しかし、この10年間に、高齢者が1.5倍も増えたでしょうか? この10年間でCT装置に画期的な進歩があったでしょうか? 答えはいずれも「いいえ」です。

九州がんセンターの先生が興味ある取り組みをされています。早期のすい臓がんを見つけるために、造影CT検査とMRI(MRCP)を両方おこなう人間ドックを始めたのです。しかし、年間やってみて、名もすい臓がんを見つけることが出来ませんでした。その要因として、ハイリスクグループの方がほとんど受診せず、健康志向の高い方の受診が多かったためではないかと考察されています。医師の思い通りには対象者が集まってくれなかったわけです。

一般的に、すい臓がんは発がんから発症まで長い年月を要すると考えられています。しかし、当院で経験した患者さんの中に、すい臓がんと診断されるか月前に腹部造影CT検査を受けていた方がおられます。その時点では、まったくすい臓に異常は無かったのです(念のために、放射線科医に再度確認してもらいました)。発がんから発症、そして進行までの時間経過はまだ詳細にはわかっていません。

ピロリ菌と胃がん、
便潜血検査と大腸がん、
B型肝炎・C型肝炎と肝臓がん、
といった具合に、絶対的なリスクファクターがすい臓がんでは見つかっていないのが現状です。


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