Archive for the ‘院長「医療に関する話」’ Category

食道裂孔ヘルニアの手術

水曜日, 5 月 27th, 2020

胃の一部が横隔膜の上に来てしまっています。80代女性】数年前から食後に心窩部痛を自覚しておられました。ここ2,3カ月は特に症状が強くなり、食事の量も減ったためか5kgの体重減少も来していました。近医で胃カメラを受けましたが『異常なし』との診断でした。腹部の診察では特に異常所見は認めませんでした。腹部エコー検査でも異常は見いだせず、すい臓疾患を疑い、CT検査を総合病院に依頼しました。その結果、胃の2/3が横隔膜より頭側に位置する食道裂孔ヘルニアと判明しました。症状が深刻であることと、ご本人の希望も考慮した上で、インターネットで手術例の多い病院を探し出し、外科的整復術をお願いしました。

手術は、腹腔鏡下で胃を縦隔内から腹腔内に引き戻した後に、横隔膜の食道裂孔部分を縫合し、また、逆流防止のために、噴門部(胃の入り口)の形成術がおこなれました。術後、食後の心窩部痛は消え、元気に退院されたとの連絡を頂きました。

食道裂孔ヘルニアやそれに付随する逆流性食道炎は日々の診療で度々出会いますが、手術を必要とする患者さんにお会いしたのは今回が初めてでした。成書には、通過障害、胸痛、圧迫性呼吸障害を認める場合は手術も考慮するべきと書かれています。胃が丸ごと胸腔内にある場合は、手術の絶対的適応となります。

今回、教訓になったのが、前医での胃カメラで『異常なし』との診断だった点です。あまりにもヘルニア孔が広すぎて、胃カメラで見る限りでは、胃の形に異常が無かったのでしょうね。残念ながら、当院で胃カメラをしなかったので詳細はわかりませんが、切歯から噴門までの距離(通常は45cm程度)がどうなっていたのか、食道は屈曲していなかったのか気になるところです。
もう一点は、こういった良性の疾患の手術適応は、癌と違って、どうしても曖昧になりがちです。症状を緩和する内科的治療で良いのか、手術に踏み込むのか、最終的判断は、患者さんご自身の意思が尊重されると思います。クリニックが出来ることは、手術の選択肢もあることを伝え、ご希望なら適切な病院に紹介するということになると思います。

【追記】結果論になりますが、この症例は、胸部レントゲン写真を撮れば、簡単に診断がついたと思います。ただし、心窩部痛で胸部レントゲンを撮るのは実際は難しいことです。

論文を書くことの効能

水曜日, 4 月 29th, 2020

医学雑誌「臨床消化器内科」に『英語で論文を書くことの効能 学会発表だけじゃダメなんですか?』という連載が目に留まりました。

論文を書くことは意味があること?24年間の勤務医生活の内、8年間は大学病院に勤めました。大学では論文作成が至上命令です。論文作成には思いのほか時間を取られるため、市中病院で沢山の患者さんを診て、いろいろな手技を身につける方が臨床医として有意義なのではないかと日々、自問自答していました。そして、ようやく、答えを見つけることが出来ました。
答:論文を書くと臨床力が上がる。
理由:自分のおこなっている医療データを集積し、統計的に解析し、きちんと自分で評価する。その結果を同業者の目にさらし、評価を受ける。その過程を経験することで、自分の医療をより客観的に評価できるようになるから。

この連載を読んで、大学病院勤務もそれなりに意味があったと思えるようになりました。大学病院の時は、論文作成を”やらされていた”感じだったのが、その後の市中病院では、自分で何故かなと思ったことに取り組み、自発的に論文作成に挑戦しました。
最初は、高ケトン体血症を呈する急性膵炎の患者さんを何人か担当しました。アルコール性膵炎で、十分な栄養が取れていなかったことが要因だと思われますが、ケトン体値と膵炎の重症度の関係が気になりました。そうすると、膵炎の患者さんの重症度を正確に評価し、しっかり治そうと意欲が湧いてきます。救急病院で、消化器内科医が私一人だったこともあり、膵炎の症例はドンドン集まりました。両者の間に正の相関関係があることが明らかになりました。学会発表にはこぎつけたのですが、論文は査読ではねられてしまいました。
次に、救急で運ばれてきた全身状態の悪い患者さんが、1年後、まったく同じ症状で救急搬入されました。しかし、2回目は救命することが出来ませんでした。この患者さんは2回とも致死的な高ケトン血症を呈していたので、予後にケトン体は関係なさそうです。生死を分けたモノは何か? 1回目は乳酸値が高かったのですが、2回目はそれ程でもなかったことに気付きました。そこで、致死的な高ケトン血症を呈する患者さんを、生存したグループと永眠されたグループに分けて検討しました。その結果、永眠されたグループでは乳酸値が有意に高かったのです。学会で発表しましたが、これも査読ではねられ、論文として陽の目を見ることはありませんでした。
論文として形に残せなかったので、大きなことは言えませんが、テーマをもって診療にあたると、自ずと積極的になることを経験出来たと思います。

コロナウイルスに思うこと(R2/4/18)

土曜日, 4 月 18th, 2020

トイレはふたをしてから流しましょう!先日、日本全国に『緊急事態宣言』は発令された新型コロナウイルス肺炎との戦いはまだまだ続きそうな情勢です。当院も試行錯誤を繰り返しながら、より安全な方策を考えて取り組んでいます。

① 人→物→人感染に注意する。
新型コロナウイルスは人→人の感染を来しますが、人→物→人の感染もクローズアップされてきています。外出制限をおこなっても、感染者が思うように減らない一因と考えられています。そこで、院内での物からの感染を防ぐために、待合室の雑誌を引き上げ、給湯器(サーバー)をストップしました。消毒液での拭き掃除を朝と午後の診療開始前におこなっています。特に、受付テーブル、診察台(1診、2診)、処置室テーブル、ストレッチャーなど、多くの方が触れる場所は特に注意しています。

② 便からの感染に注意する。
新型コロナウイルスは便中に大量に存在しているようです。トイレのふたをしないで水を流すと、ウイルスが飛散するので、必ず、ふたをしてから水を流すことが大切です。そこで、当院では、大腸カメラの前処置の下剤はご自宅で飲んでもらうことにしました。また、スタッフには、トイレ掃除の際は、ゴーグルを付けるように指示しています。
便器はもちろんのこと、ふたの内側、レバー、操作パネルおよび壁も消毒液での拭き掃除を指示しています。

③ 感染の可能性のある方とそうでない方の動線を分ける。
発熱、咳、呼吸苦、強い倦怠感、味覚・嗅覚異常、等の症状のある方は、最初に「帰国者・接触者相談センター」に相談してもらいます。その結果、クリニックでの診察を指示された場合は、当院でも対応しています。電話連絡を受けて、車で来院される場合は、駐車場で聞き取りをおこないます。歩いて来られる場合は、玄関脇に椅子をご用意していますので、そこで聞き取りをおこないます。症状から処方をおこない、数日間の自宅療養(経過観察)をお願いしています。症状の改善が無い、増悪した場合は、再度「帰国者・接触者相談センター」に連絡するか、発熱外来をおこなっている総合病院に問い合わせています。

コロナウイルスに思うこと 令和2年4月5日

日曜日, 4 月 5th, 2020

(青:欧米) vs (赤:日本)コロナウイルス感染によって、日々刻々と情勢が変わっていきます。クリニックを訪れた皆さんや私を含めたスタッフがクリニック内で感染する確率を出来るだけ低くする努力は怠らないようにしようと考えています。

① 換気を良くする
待合室、検査室、リカバリールーム、等窓を少し開けて新しい風が入るように心掛けています。
② スタッフのマスク着用・消毒の徹底
受付、ドアノブ、トイレ回りなどアルコール消毒をこまめにやっています。待合室の雑誌や冊子は感染予防のために引き上げています。
③ 予約枠の増設
これまで、午前中1時間、午後1時間の予約枠を取っていたのですが、現在、午前中2時間、午後1時間に増やしています。予約は15分に1名ですので、予約時間どおりに来院してもらえば、患者さん同士が接する機会はかなり少なくなります。
④ 電話再診の活用
慢性疾患や難病で通院している方で、病状が落ち着いていれば、電話再診が可能です。来院する必要が無くなりますので、「もし、クリニックで感染したら・・・」という不安は解消できます。ご希望の薬局に処方箋をFAXしておきますので、ご自身で薬を取りに行ってください。
⑤ 診察の工夫
病状が安定している方であれば、診察室では問診だけにしています。聴診器を当てたり、触診することは控えています。2分以内の会話であれば、感染の可能性は低いとのことですので、今は簡素な診療を心がけています。なお、初診の方やいつもと症状が違う方はこれまで通り、しっかり診察します。
⑥ 発熱・咳症状の方の動線をそれ以外の方と分ける
発熱・咳症状で、車で来院された方は車内で待機してもらいます。タクシーや歩いて来院された方は待合室と離れた場所で待ってもらっています。感染予防の観点から止むを得ず導き出した方策です。ご理解の程よろしくお願いいたします。

【余談❶】ネットで見つけたグラフです。縦軸はコロナウイルス感染者数です。縦軸が対数であることに注意してください。0→10→100→1,000→10,000といった具合に等間隔になっています。横軸は時間です(3/25現在)。
感染者は指数関数的(倍、その倍、さらにその倍というふうに)に増えていきますので、患者数を対数でみると直線になります。
青い直線が欧米で、赤い直線が日本です。日本の傾きは非常に緩やかです。このグラフを見て、皆さん少しでも安心してください。

【余談❷】
「いたがき歯科クリニック」つれづれ日記』というブログを読むと、とっても勇気が湧いてきます。東京の方で開業されている歯科医さんです。

Colitic cancer(炎症性腸疾患由来の大腸がん)

水曜日, 4 月 1st, 2020

「お腹痛い」炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎では大腸がんのリスクが高くなることが知られています。

70代女性
40年前から潰瘍性大腸炎を患っておられました。ここ数年は寛解状態が続いていたのですが、大腸カメラを希望され2年ぶりに来院されました。大腸カメラで、横行結腸に1cm大の扁平な隆起を認め、周囲の炎症性粘膜とは印象が違っていました。生検で大腸がんと診断されました。

言葉の区別
通常の大腸がんは、colon cancerと英語表記しますが、IBD由来の大腸がんはcolitic cancer と表記します。大腸炎(colitis)に由来するがん(cancer)という意味なのでしょう。

頻度
IBD患者さんの大腸がんリスクは、一般の人と比べて1.6から2倍と言われています。罹患10年で1%、20年で2%、20年以上で5%の発症率と言われています。

発癌のメカニズム
IBD由来の大腸がんは炎症性発がんであり、この点が通常の大腸がんと大きく異なります。慢性の炎症をベースに発がんするものには、ピロリ菌感染による慢性胃炎に出来る胃がんや、ウイルス性慢性肝炎に出来る肝臓がんなどが挙げられます。

治療方針
以前は、IBD由来の大腸がんは『全大腸切除』が一般的でしたが、最近では、内視鏡的粘膜切除が適応されることも可能となってきました。この方は、大腸全摘出術が施行されています。

IBD由来の大腸がんの知識はありましたが、経験したのは初めてでした。今回の経験を今後の診療に生かしていこうと思います。

コロナウイルス感染症(公衆衛生学的アプローチ)

水曜日, 3 月 11th, 2020

PCR(陽性):70(コロナ有り) 299,970(コロナ無し)
PCR(陰性):30(コロナ有り)   699,930(コロナ無し)

北九州市(100万人)に100人のコロナウイルス感染症の方がいると仮定します。
(令和2年3月10日現在 1名の報告あり)。
有病率は100/1,000,000=0.01%です。
コロナウイルス感染症の診断に用いられているPCR検査の感度は70%程度とされています。ですから、コロナウイルス感染(+)の100人を検査すると、70人が陽性に、30人が陰性に出ます。
PCR検査の特異度(陰性の人に正しく陰性と出る確率)の報告が見当たらなかったので、仮に70%と設定します。100万人から100人を差し引いた999,900人の70%(699,930人)が正しくPCR陰性と診断されます。しかし、999,900人の30%に相当する299,970人もの方がコロナウイルス感染していないのにPCR陽性(偽陽性と言います)と判断されてしまいます。
その結果、コロナウイルスPCR検査の精度(PCR陽性の中の真のコロナウイルス感染患者さんの比率)は70/70+299,970)=0.02%と異常に低い値になってしまいます。

100万人都市で100人の病気の人を探すために、全員にPCR検査をおこなうと、約30万人の人が該当してしまうのです。このように、有病率の低い疾病に対して「全例検査」は莫大な『偽陽性』を増やし、社会を混乱に陥れ、助けなければならない人を助けられない状態をもたらすだけです。

しかも、治療法が確立していない現状では、早期に診断することで救命率が上がるわけではありません。仮に、コロナウイルス感染症と診断がついても、軽症であれば、自宅療養を指示されるだけです(コロナウイルス肺炎の80%は軽症)。日々、死の恐怖を意識しながら自宅で過ごすのであれば、知らないで「念のため」と思って過ごす方が精神的に楽だと思うのです。

コロナウイルスのPCR検査は、必要な人に限っておこなうべきなのです

ポリペクトミー後出血(後半)

日曜日, 2 月 16th, 2020

開院以来(11年間)1,295名のポリペクトミーをおこなってきました。そのうち、22名にポリペクトミー後の出血を来しました(1.7%)。

出血状況
出血までの日数は平均1.9日(3時間後~4日後)であり、ポリペクトミー後の2~3日間は安静が重要であることを再認識しました。
22名中20名にクリップによる止血術をおこなっています。うち3名は夜間の対応であったため、近隣の総合病院で止血術をおこなってもらいました。感謝の気持ちで一杯です。
当院で止血術をおこなった17名についてさらに検討してみました。
観察時に凝血塊が付着しているものの止血状態であったものが10名、にじみ出る様な出血を来していたものが7名、湧き水様の出血を認めたものが1名おられました(重複あり)。ですから、ポリペクトミー後出血は出来るだけ早急に内視鏡検査をおこない、出血部位を観察することが必要であると思います。
出血した内視写真をもう一度丹念に見ていくと、凝血塊の場所がクリップとクリップの間よりもクリップの列の外に位置してことが時々見られることに気付きました。クリップをかける時に今までのイメージよりより長い距離の縫合が必要なのかもしれません。最近は、「これで十分」と思った手前に、念のためにもう1本クリップをかけるようにしています。

経時的な検討
2009年~2014年前期2015年~2019年後期と設定して、検討してみました。
2017年にコールドポリペクトミーを取り入れたことでポリペクトミーの件数は大幅に増えました。しかし、コールドポリペクトミーを除いた通常のポリペクトミー数は前期が75名(年間)に対して後期は77名(年間)と大きな変化はありません。
一方、前期のポリペクトミー後出血の頻度が2.5件(年間)に対して、後期は1.6件(年間)と減少しています。その一因として、止血予防にクリップをかける本数が、前期では平均1.3本であったのに対し、後期では2.6本に増えていることが関係していると思います。
ポリペクトミー後に十分に止血確認をおこない、必要に応じて止血処置をすることで、ポリペクトミー後の出血を減らすことが出来たという報告があります(兵庫医大、2018年)。予防的クリップが終了した後も丁寧に観察して、念のための「もう1本」のクリップを打つことでポリペクトミー後出血がもっと減ると信じています。

e3839de383aae383bce38397efbc91生食を局注しポリープを浮かせます。通電しながらスネアで切除します。傷口をクリップで縫合します。

ポリペクトミー後出血(前半)

日曜日, 2 月 9th, 2020

開院以来(11年間)1,295名のポリペクトミーをおこなってきました。そのうち、22名にポリペクトミー後の出血を来しました(1.7%)。

①患者さんの背景

22名の平均年齢は58才、男女比は12:10でした。最も若い方は20才、最高齢者は82才です。
男性(12名)の平均BMIは26でした。女性(10名)の平均BMIは21でした。男性の場合、肥満気味の方が多いようです。
出血に影響する血圧や動脈硬化の疾患の有無について調べました。
降圧剤を内服中の方が9名、高脂血症の治療中の方が2名います。糖尿病の方はいません。他、肝硬変症1名、透析中の方が1名でした。
不整脈(心房細動)に対して抗凝固剤を内服されている方が1名いました。

②ポリープの特徴

切除したポリープの大きさは平均7.5mmでした(4~20mm)。ポリープの形は、有茎性(3名)、亜有茎性(3名)、無茎性(15名)、表面隆起型(1名)でした。ポリープの部位は、S状結腸が9名、直腸が8名、横行結腸が6名でした(1名に2か所からの出血あり)。S状結腸は屈曲が強く、良好な視野が確保しにくいことが一因と思われます。直腸と横行結腸は意外な印象でした。いずれのポリープにもがんは認めませんでした。

手技に関する検討

ポリープ切除をおこなった際には、後出血の予防のためにクリップによる創部の縫合をおこなっています。予防的クリップは、平均1.8個(0~4個)でした。コールドポリペクトミー後の出血が1名おられましたが、コールドポリペクトミーの場合は予防的クリップおこなっていません。1.8という数字は意外に少ない印象でした。切除面が広い場合、クリップの本数は必然的に増えますので、切除面の広さと出血はそれ程関係ないようです。

無茎性のポリープ(8mm)です。生食を局注しポリープを浮かせます。通電しながらスネアで切除します。傷口をクリップで縫合します。

大腸粘膜内がん 

土曜日, 6 月 1st, 2019

大腸粘膜の層構造です。最近、大腸のポリープ切除(ポリペクトミー)をおこなった結果、ごく初期の大腸がん(粘膜内がん)だった方が人続きました。ポリペクトミーでがんは完全に取り切れていますので、追加の治療は必要ありません。

70代男性
数か月前に当院でポリペクトミーをおこなっています。個切除したのですが、まだいくつか残っていたため、追加のポリペクトミーをおこないました。12mm大のポリープが粘膜内がんでした。
70代女性
肛門の違和感のため大腸カメラをおこなったところ、S状結腸に15mm大のポリープを認めました。ポリペクトミーをおこなったところ、粘膜内癌でした。

大腸の壁は、内側から、①粘膜固有層 ②粘膜下層 ③固有筋層 (④しょう膜下層) ⑤しょう膜 の層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。
通常のポリペクトミーでは、②粘膜下層の深いところで切除されます(図の黄色いラインのすぐ上)。切除ラインは決して③固有筋層には入りません。切除したポリープを顕微鏡で観察し、がんが粘膜固有層に留まっていれば、「粘膜内がん」です。
がんが側方、垂直方向共に切除断端から確実に離れていることも重要です。
当院がいつもお願いしている病理の先生は、粘膜内がんであっても、「smがん」と同様に
・がんの分化度
・脈管侵襲の有無(リンパ管、脈管にがん細胞が無いか)
・浸潤先進部の族出(budding)(がん細胞のばらけ具合)
を詳しく検討してくれます。詳細な検討をすることで患者さんの安心度が増すと思うのです。いつも、頭が下がる思いです。

食道がんとNBI

水曜日, 5 月 15th, 2019

ゴルフ場のバンカー内視鏡検査において、早期の食道がんは通常観察では見つかりにくく、ヨード染色で初めて「ヨード不染帯」として見つけられことがあります。しかし、全例にヨード染色をすることは不可能です。近年、NBIによる画像強調内視鏡により、食道がんは brownish area として内部の異常血管の密な増生をとらえることが出来るようになりました。内視鏡像はゴルフ場の「緑の芝生の中にあるバンカー」のイメージです。

60代男性
年前に胃がんのために手術を受けています。今回、フォローアップ目的で胃カメラをおこないました。胃を切除すると食道に負担がかかるため、食道がんのリスクが高くなります。そのことを踏まえて慎重に食道を観察しましたが、通常観察では異常は見当たりませんでした。NBI観察では、緑色の食道粘膜像のなかに、わずかに茶色の斑点の領域(brownish area)を認めました。ルゴールを散布すると、同部位に一致してルゴール不染帯が浮かび上がってきました。生検で食道がんと診断されました。

NBI観察の凄いところは、オートマチックに食道がんを見つけてくれるところです。通常観察では、人間がわずかな色調の変化や凹凸などを探しながら隠れているがんを見つけるわけですが、NBI観察では器械が教えてくれるのです。
通常観察で早期の食道がんを見つけるためには、経験や知識が必要ですが、NBI観察では誰がやっても結果は同じです。
実際、NBI観察を経験すると、「最新の器機がサポートしてくれている」という安心感が大きいです。通常観察でチェックした部位がNBI観察ではどうなるのか、より一層、詳細に観察するモチベーションが湧いてきます。

食道がんは、4年間程粘膜にとどまった後に粘膜下層に進展します。その1年後には筋層まで進展する進行がんになると考えられています。食道がんに「診断の遅れ」は許されないのです。

NBI:narrow band imaging

【治療の結果】大学病院で内視鏡治療による粘膜切開・剥離術(ESD)がおこなわれました。手術は無事終了しました。がんは粘膜の最も浅いところ(粘膜上皮)にとどまっていました。


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