Archive for the ‘消化器病と血液疾患’ Category

消化器病と血液疾患(3)  潰瘍性大腸炎と免疫抑制剤と巨赤芽球性貧血

月曜日, 11 月 5th, 2012

血液を造る材料である鉄やビタミン類は胃腸で吸収されるため、消化器病と貧血は密接に関係しています。
このシリーズでは、そのいくつかをご紹介していきます。

潰瘍性大腸炎の治療でペンタサやステロイド薬で十分な効果が得られない場合に免疫抑制剤(イムラン)を使うことがあります。

イムランは葉酸の合成を阻害するために、時に葉酸欠乏性の巨赤芽球性貧血を引き起こします。巨赤芽球性貧血はMCV(平均赤血球容積)が正常上限(100)を超えるので、MCVに注意していれば、直ぐに気が付きます。

一般に、潰瘍性大腸炎は貧血を呈していることが度々あり、重症度判定のひとつにもなっています。大抵は慢性の炎症や低栄養あるいは消化管からの出血が貧血の原因ですので、正球性貧血か小球性貧血です。この貧血は病状が安定すると改善されるので、日常診療ではあまり気になりません。

しかし、イムランを投与した場合は、当初は鉄欠乏性貧血だったのが、葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血に変わっていることがあり注意が必要です。私の経験では、イムランの服用を始めて数か月でMCVが100を超えた患者さんがいらっしゃいました。Hb(ヘモグロビン)値の低下は僅かだったのでイムランを継続していたのですが、MCVが120前後になると血中の葉酸値は異常低値を示し、Hb値の低下も目立ってきたため、やむをえずイムランを中止しました。

人気ブログランキングへ当院を広く知っていただきたいと思い、ブログランキングに参加することにしました。左のバナーをクリックすると票が入り、ランキングがあがる仕組みです。
よろしかったら応援よろしくお願いします。

消化器病と血液疾患(2)

水曜日, 11 月 9th, 2011

胃がん、大腸がんと鉄欠乏性貧血

貧血の中で最も頻度の多いのは鉄欠乏性貧血です。胃や大腸などの消化管からの慢性的な出血による鉄欠乏性貧血は、日常診療でたびたび遭遇します。鉄欠乏性貧血は小球性貧血であること(MCVが80以下)、血清鉄が低いこと、鉄結合能が増えていることなどが特徴です。なお、鉄欠乏性貧血では、上部食道に「ウェブ」と言われる水掻きの様なヒダが出来ることがあると医学書に記されていますが、まだ見たことがありません。

男性の鉄欠乏性貧血の原因割合(日本鉄バイオサイエンス学会より引用)① 閉経前の女性の貧血は生理によるものがほとんどですが、男性の貧血は危険です。胃腸以外の出血(鼻血や血尿)で貧血になることはまずありません。男性の方は貧血を指摘されたら、是非、胃腸の検査を受けることをお勧めします。

② ヘモグロビン(Hb)値は正常範囲でも、経時的に検討することが必要です。正常範囲でも、以前よりも下がっていれば要注意なのです。
Hbがいつも15g/dlあった方が、数年で14g/dl, 13g/dlと下がってきました。まだ正常範囲ではありましたが、検査を受けて頂いたところ、大腸がんが見つかった経験があります。

③ Hbは高齢の方では下がります。そもそも、若い人も高齢の方も正常範囲が同じということに無理があります。高齢になれば、骨髄の造血機能が低下します。
正常値をそのまま高齢の方に当てはめれば、健康な高齢の方の多くが「貧血症」という病気になってしまいます。

【おまけ】いろんな健診のデータを見せて頂くことがありますが、どこの健診機関も一律、「正常範囲であれば正常」という紋切り型の判定です。1年、2年前のデータも併記されているにも関わらず、経時的に比較した検討がなされていないことは残念です。

人気ブログランキングへ当院を広く知っていただきたいと思い、ブログランキングに参加することにしました。左のバナーをクリックすると票が入り、ランキングがあがる仕組みです。
よろしかったら応援よろしくお願いします。

消化器病と血液疾患(1) 胃摘出術後の貧血

火曜日, 10 月 18th, 2011

血液を造る材料である鉄やビタミン類は胃腸で吸収されるため、消化器病と貧血は密接に関係しています。
このシリーズでは、そのいくつかをご紹介していきます。

貧血はヘモグロビン値と同時に赤血球の大きさ(MCV)を確認することが大切です。
MCVが正常以下を小球性、正常範囲は正球性、正常以上を大球性と言います。この3分類により貧血の原因がほぼ限定されます。
①小球性貧血:鉄欠乏性、他。
②正球性貧血:溶血性、他。
③大球性貧血:ビタミンB12欠乏性、他。

 今回は、胃摘出術後の貧血についてお話ししましょう。
食べ物に含まれるビタミンB12(VB12)は胃の中にある内因子と結合した形で、小腸で吸収されます。
内因子はVB12の吸収には必須の物質です。この内因子の欠乏がもとでVB12の吸収障害で起こる貧血を悪性貧血といいます。
「悪性」と名付けられた由来は鉄剤を投与しても治らなかったからだそうです。

 何らかの理由で胃を切除した場合も、内因子が無くなりますから、VB12の吸収が出来なくなります。
体内に貯蔵されているVB12は約5年で枯渇します。胃がんの手術を受けた場合、5年経過した時点で再発がなければ、通院は終わりです。
そのため、術後5年以降に発症してくるVB12欠乏性貧血は見逃されがちです。
胃の手術を受けている方は、時々、貧血の検査を受けてください。その時、ヘモグロビン値が正常だからといって安心してはいけません。
同時にMCVも確認してください。MCVが大球性であればVB12欠乏性貧血がひそかに進行中であり要注意です。

悪性貧血も胃摘出術後の貧血もVB12の注射で治します(経口投与は効果がありません)。
当院でVB12欠乏性貧血の診断を受けた方は、きちんと治療を受けて頂き元気です!

人気ブログランキングへ当院を広く知っていただきたいと思い、ブログランキングに参加することにしました。左のバナーをクリックすると票が入り、ランキングがあがる仕組みです。
よろしかったら応援よろしくお願いします。


Social Widgets powered by AB-WebLog.com.