8 月 1 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ①「伝染性単核症」

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

伝染性単核症はEBウイルスに感染することによって発症する病気です。高熱、リンパ節腫脹、喉の痛み、肝機能障害、などが主な症状です。唾液を介して感染することが多いことから俗に「kissing disease(キッシング病)」とも言われています。

39℃でた!先日、数日間の高熱の後に、瞼(まぶた)がむくんだために来院された方(10代)がいらっしゃいました。

まず尿を調べると、蛋白が出ています。血液検査では白血球が増えています溶連菌感染後ネフローゼ症候群をおこし、瞼が腫れているのではないかと推理しながら診察を進めました。血液検査では肝機能障害を認めました。エコー検査では脾臓が腫れ、胆のう壁も肥厚していました。血液検査結果から、当初、想定していたネフローゼ症候群は否定されました。しかも、瞼の腫れと胆のう壁の肥厚がどう関係しているのか説明できません。正直、混乱してしまいました。白血球増多と脾臓の腫れから最悪の場合、「白血病」の可能性があるかも知れないと考えました。念のために、大学病院の血液内科で診て頂くことにしました。

その結果、リンパ球の半分以上が『異型リンパ球』であり、(後に判明したことですが)EBウイルスに初感染のパターンのウイルス抗体価を示したことで、伝染性単核症と診断されました。紹介状に「伝染性単核症の疑い」と書けなかったことが、口惜しかったのですが、患者さんが1週間の入院で元気に退院されたので、兎に角、良かったです。

文献を調べてみると、伝染性単核症でまぶたが腫れることが、確率は低いものの、在るのですね。初めて知りました。なぜ、まぶたが腫れるのかは、分かっていないようです。また、本疾患で胆のう壁が肥厚することも稀ながら報告されていました。

(〇)発熱 90%以上
(〇)首のリンパ節の腫れ ほぼ100%
(〇)喉の発赤 80~90%
(☓)肝臓腫大 50~90%
(〇)脾臓の腫大 30~75%
(☓)発疹 30%程度
〇)眼瞼浮腫 10~30%
〇)胆のう壁の肥厚 非常にまれ

〇印:本例に当てはまる。☓印:本例に当てはまらない。

「瞼が腫れている」という事象に惑わされて、確定診断に至るまでに遠回りをしてしまいました。伝染性単核症は教科書どおりではない、非典型的な症状や経過を辿ることが多いのですが、改めて、診断の難しい病気であることを思い知らされました。

7 月 19 日, 2019

『開院10周年記念⑧』 風疹 高抗体価

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。自分にとって印象深かったブログを紹介してきましたが、今回が最終回です。
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風疹ワクチンは1995年までは、女子のみに実施されていました(現在は男女とも接種)。2006年までは子供の頃に1回打つだけでした(現在は2回接種)。その結果、風疹の抗体を持たない昭和生まれの男性が社会問題になっています。

【30代男性(昭和生まれ)】
先日、妊娠を希望するパートナーとして風疹の抗体検査(無料)を受けられました。抗体価(HI法)は2048倍と異常な高値を示しました。発熱、発疹、リンパ節腫脹などの風疹を疑うような症状はありません。

妊娠中に風疹に感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群をおこすことがあります。先天性風疹症候群の赤ちゃんは、様々な障害を持って生まれます。
風疹の抗体価は、陰性(8倍未満)、ボーダーライン(8倍~16倍)、陽性(32倍以上)と判定します。32倍以上あれば、風疹に対する免疫があるため、安心して妊娠できます。
16倍以下であれば、ワクチン接種が望ましいです。

では、2048倍はどういうことなのか。可能性が高いのが、風疹の不顕性感染(あるいは再感染)です。自然感染後の3~10%に、ワクチン接種後の14~18%に再感染が起こりうるのです。再感染は、無症状の事が多く、本人も気付かないのです。その結果、パートナーに風疹を感染させてしまうわけです。

女性が風疹の再感染で妊娠した場合を想定してみましょう。ワクチンも打っているし、症状もないので、まさか、風疹に再感染しているなんて想像もできないでしょう。しかし、ワクチンの効果は永遠ではないのです。母体は再感染でも、胎仔にとっては初感染ですので先天性風疹症候群は発症します。再感染による先天性風疹症候群をまとめた論文では、母体に発疹が出たのは27%、急性期感染の裏付けとなるIgM抗体の陽性率は50%程度と診断が難しいことを物語っています。

結局、この男性はどうすればよいのでしょうか?
① まず奥さんの抗体価を確認する。陽性であれば、妊娠に支障はないです。
② 奥さんの抗体価が陰性又はボーダーラインであれば、ご主人の抗体価が落ち着いてから妊活を再開する方が無難でしょう。

【あとがき】
妻が妊娠中に風疹にかからないようにするために、夫が風疹抗体を持っているのか調べられるようになりました。抗体がなければ、ワクチン接種に補助金も出ます。今回は、『高抗体価』という思わぬ事態に遭遇しました。この方にお会いするまで、風疹が再感染することを知りませんでした。しかも、再感染は、ほぼ無症状なのですから、2次感染の防ぎ様が無いですね。医療には想定外の事態が起こることを認識させられました。

ブログは、それなりに下調べをしなければ書けません。『是非、読んでもらいたい』という気持ちが強ければ、調べることも苦になりません。新しい知見が得られてむしろ楽しいです。これからも、その気持ちをエネルギー源にして、ブログを続けていきたいと思います。

7 月 18 日, 2019

『開院10周年記念⑦』 コールドポリペクトミー

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。自分にとって印象深かったブログを紹介したいと思います。

【大腸ポリープの癌化率】
大腸ポリープ* の何%が癌化するのでしょうか。ポリープの大きさと癌化率の関係です。
1~5mm大:0.5%
6~10mm大:13.2%
11~20mm大:50.8%
21mm~:66.6%
大きくなればなるほど、癌になるリスクは大きくなるわけです**。ですから、あまり大きく育たないうちに、出来れば見つけ次第、ポリープ切除をしておくことが必要です。これらのデータを元に当院では積極的にポリープ切除をおこなっています。

【コールドポリペクトミーの導入(写真参照ください)】
通常のポリープ切除は、粘膜下に生理食塩水を局注し、ポリープを浮かせた後にスネアをかけ、通電することで焼灼切除しています。焼灼後に出来た粘膜の傷はクリップで縫合します。
一方、平成29年から導入したコールドポリペクトミーは、生理食塩水を局注せず、そのままスネア切除します。この際、通電もしません。一見、乱暴な治療に見えますが、粘膜の浅い所には、細い血管しかないため、重篤な出血は来しません。通電しないため、遅発性の出血のリスクは回避されます。当院では、通常のポリープ切除とコールドポリペクトミーをポリープの大きさや形によって適切に使い分けています。

*大腸ポリープの85%は腺腫です。腺腫の癌化率について説明しています。
**今回提示したポリープの癌化率は広基性(Ⅰs)ポリープについてのデータです。
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【あとがき】
写真を見てお分かりのように、コールドポリペクトミーは、非常にきれいにポリープが切除出来ます。しかも、安全な手技ですので、安心して治療を受けて頂けます。当院では、積極的に、コールドポリペクトミーをおこなっています。

7 月 17 日, 2019

『開院10周年記念⑥』 急性肝炎→肝不全→肝移植術→生還

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。自分にとって印象深かったブログを紹介したいと思います。

e8829de7a7bbe6a48d1週間以上続く強度の食欲低下吐き気を訴えて来院されました。嘔吐や下痢は無く、腹痛もありません。発熱もありません。通常の胃腸炎らしくないのです。しかし、症状は深刻な様子でした。急性肝炎を疑い、血液検査をおこなった結果、著しい肝機能障害が確認されました。直ちに大学病院に入院となりましたが、入院後も肝不全状態は改善せず、移植術施行病院へ転院となりました。タイミング良くマッチングされた肝臓が提供され、移植術がおこなわれました。術後経過も良く、1ヶ月後には退院されました。なお、肝炎の原因は特定できなかったようです。

今回、私は最初に一度診察しただけで、よもや肝移植術になろうとは想像だにしていませんでした。しかし、この人命救助のホンの一端を担えたことで、とても充実した気持ちになりました。

本邦では、2010年臓器移植法が改正され、それまでは本人(脳死)の生前の書面による意思表示が必要であったものが、本人の意思が不明な場合には、家族の承諾で臓器が提供できるようになり、移植術が飛躍的に増えました。肝不全(あるいは劇症肝炎)からの肝移植術も年間40例ほど施行されています。

臓器移植法が改正される前に、肝臓移植になった患者さんを担当したことがありましたが、肝臓の提供者を血縁者からつのり、保険適応の面でも十分整備されていなかったため、資金集めに、患者さんのご家族の苦労は大変なものでした。今回は、直ぐに臓器提供があり、医療費もすべて保険診療でカバー出来ています。現在の日本の移植医療は良く整備されています。

【あとがき】
この方は、土曜日の診療終了間際に診察したのを覚えています。日曜日をはさんで、月曜日の朝一番にオンラインで送られてきた肝機能の異常値を確認しました。直ぐに、出勤途中のご本人に電話をかけ、会社に行くのをやめて、大学病院を受診するよう指示しました。入院1~2週間後には、肝臓移植術が施行されたわけです。結局、この方が急性肝炎にかかった原因はわからずじまいでした。未知の肝炎ウイルスが存在するのかもしれません。

7 月 16 日, 2019

『開院10周年記念⑤』 除菌治療の進化

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。自分にとって印象深かったブログを紹介したいと思います。

e38394e383ade383aae88f8c平成27年も沢山の方にヘリコバクターピロリ菌の除菌治療を受けて頂きました。平成27年の除菌治療に関する最も大きなニュースは「タケキャブの導入」でしょう。これまでの1次除菌の成功率は全国平均が75%程度でした。しかし、除菌治療の3剤の内のひとつであるプロトンポンプインヒビター(PPI)にタケキャブを使えるようになって、除菌成功率は90%以上に上昇したのです。従来のPPIに比べて、タケキャブの方が、胃酸分泌抑制能力が圧倒的に強いからです。

平成27年7月以降、当院ではPPIをタケキャブに変更しました。除菌成功率をタケキャブ採用前後で比較してみました。
従来の1次除菌の成功率63%(99人/156人中)であったのに対し、タケキャブ導入後は95%(53人/56人中)と飛躍的に向上しました。

なお、2次除菌について、同様の比較検討をおこなったところ、92%(34人/37人中)から100%(12人/12人中)となっています。タケキャブって凄いですね。
まだ、除菌を受けていない方、この高い成功率をみてください。是非、除菌しましょう!

【あとがき】
当時、当院の1次除菌の成功率は60%台まで落ち込んでいました。抗生物質のクラリスに対する薬剤耐性が問題視されており、クラリスが悪者扱いされる風潮でした。誰もPPIを問題にしていませんでした。
ところが、PPIをタケキャブに変えることで、成功率は95%まで引き上げられたのです。世の中の風潮に安易になびいてはいけないと思いました。そもそも、つい30年前までは胃の中にピロリ菌がいることを誰も信じなかったのですから。

7 月 15 日, 2019

『開院10周年記念④』 乗馬「駈足(かけあし)」

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。自分にとって印象深かったブログを紹介したいと思います。

e9a788e8b6b3最近、駈足が出来るようになりました! ダダダーン、ダダダーン、ダダダーン、と3拍子でドンドン走ります。その爽快感は言葉に言い表せません。強いて例えれば、城島高原の木製のジェットコースター(ジュピター)に乗っている感じです。木製ゆえのきしみ音や不安定感、そのスリル。それが、何度も何度も繰り返し味わえるのです。駈足が出来るようになるまで乗馬を続けて良かった。

常足(なみあし):馬は歩いています。
軽速足(けいはやあし):馬はサッサッか歩いています。人間は、鞍(くら)の上で「立つ、坐る」を繰り返します。
と来て、いよいよ『駈足』の練習に入りました。
まず、馬に「駈足するよ。」という意思を伝えるのが難しい。なかなか、走ってくれません。走っている馬は、首を上下に振ります。首の動きでバランスを取らないと走れないからです。目の前で馬の頭が上げ下げするのも結構恐怖を感じます。
走っている馬には鐙(あぶみ)と下半身だけで馬に密着するしありません。お尻は、走る反動で鞍から跳ね上げられそうになります。手綱(たづな)を引けば、馬は止まってしまいますから、常に軽く引っ張った状態で保持しなければいけません。
走り続けるためには、馬の速度が落ちかけたら、鐙で馬のお腹を締めたり、鞭(むち)で軽く叩いたり、意思表示を示さなければ走り続けてはくれません。

これらのことを、走っている不安定な馬の上でおこなうわけです。自動車と違って、馬は一定の速度で走る訳ではありません。馬が脚を滑らせて、急に「グラッ」となることもあります。油断大敵です。常に、上半身はリラックスさせておかなければ、柔らかい身のこなしはできないのです。難しい! でも、やっぱり爽快です。

駈足が出来るようになって気付いたことがあります。
ひとつは、馬の手入れに気持ちが入るようになりました。「今日もまた走ってね」「今日は良く走ってくれたね。」そう思うと、蹄の裏掘りも体にブラシをかけるのも丁寧になります。
もうひとつは、走っている馬の上から、弓矢を打ったり(やぶさめ)、輪になったロープ投げたりする(西部劇)のは、メチャメチャ難しいことなのだとわかりました。

【あとがき】
駈足(かけあし)が出来た時の感動は今でも鮮明に覚えています。一生、駈足は出来ないのかな、と思っていましたから。もっと若い時に乗馬に出合いたかったですね。

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7 月 14 日, 2019

『開院10周年記念③』 正常値と異常値

e6ada3e8a68fe58886e5b883『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。自分にとって印象深かったブログを紹介したいと思います。

健康診断を受けると、検査結果と共に、正常値が記載されていて、自分の値が正常範囲だったのか、異常だったのか、一目でわかるようになっていますよね。正常値に収まっていれば安心し、異常値だったら、食事のことを反省したり、どこかクリニックを受診しようかと考えたりします。ところで、この正常値、どうやって決めているかご存知ですか?

多くの正常値は、健康な成人100人の採血結果から決められています。100人の検査結果をプロットすると、正規分布になります。正規分布とは、なだらかな裾野の長い富士山のような形をイメージして下さい。このちょうど真ん中(平均値)から上下標準偏差の2倍以内を正常値と決めています。この範囲に収まる人は全体の95%に相当します。この95%に入らなかった残りの5%の人、グラフで言うと、左右の裾野の端っこの方は異常値として扱われます(グラフ参照)。ですから、健康な成人100人のうち5人は「異常値」として扱われるわけです。不思議でしょう? 言い換えれば、正常値はあくまでも目安であって、個人の特性は考慮していないのです。

例えば、総コレステロール値は 220 mg/dl 未満が正常と決められています。219 mg/dl ならば健康で、220 mg/dl ならば病気でしょうか?そんな風に考える人は少ないと思いますが、わずかな数字の違いに一喜一憂することはナンセンスです。それよりも、同じ正常値でもここ数年で少しずつ増加傾向だ。とか、高血圧や肥満もあるから、今のうちから気をつけておかないといけない。と考える方が有意義です。

【あとがき】
「血液検査の正常値は正規分布している」という考え方が私の血液検査に対する基本です。ですから、正常値を少々逸脱していても「気をつけましょう」程度に留めています。検査結果をすべて正常範囲に揃えることに縛られている方を時々お見受けします。その時は、このブログの内容を話すようにしています。

7 月 13 日, 2019

『開院10周年記念②』 ほこり

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。自分にとって印象深かったブログを紹介したいと思います。

嬉野温泉に行った時のことです。宿泊した宿は、モダンな造りで、館内は灯りを落とし、静かで落着いた雰囲気でした。スタッフの方も、静かで上品e381bbe38193e3828aに振る舞っておられました。「また、来たいな。」って思いながら、チェックアウトをしていた時に、ふと足元に目がいきました。結構、ほこり(埃)が溜まっていました。いつの間にか、目でほこりを追いかけてしまっていました。

温泉宿なのですから、お風呂と食事が良ければ、それだけで、十分です。それは、良く分っています。それでも、雰囲気のある良い宿だっただけに、残念な気持ちでした。スタッフの方も一生懸命に掃除をなさっていると思います。そんな細かい所まで手が回らないのかもしれません。責める気持ちは毛頭ありません。

ひるがえって、私のクリニックはどうだろうか?毎日、スタッフが掃除機をかけて、拭き掃除もしてくれています。それでも、観葉植物の後ろ側とか、イスの背もたれとか、結構、ほこりが溜まっていました。そういう目で見ないと気が付かないものですね。ということで、休日は、クリニック中を拭き上げて、スッキリしました。

【あとがき】

旅館を経営するのはとても大変な仕事だと思います。設備投資、銀行とのお付き合い、従業員の募集・教育、食事の準備、宿泊予約の管理、ホームページ作成、等々。数えあげればきりがありません。掃除にしたって、お風呂掃除や客室の掃除、庭掃除など毎日毎日大変です。それなのに、私は、カウンターの足元のほこりに気を取られていたのですから。「サービスを提供する」ことの厳しさや「お客様に満足して頂く」ことの難しさを身をもって感じた出来事でした。その後のクリニック運営にとても良い経験になりました。

7 月 12 日, 2019

『開院10周年記念①』 急性膵炎

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『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。自分にとって印象深かったブログ(8編)を紹介したいと思います。

今回の主人公はふっくらした中年の女性です。胆石が原因で急性膵炎になりました。すい臓は胃の背中側についている100g程度の小さな内臓です。
主な働きは消化酵素液を分泌することと血糖をコントロールするホルモンを分泌することです。膵炎をおこしますと、すい臓は自分の作った消化酵素液で自分自身を溶かしていくわけです。
この患者さんも激しい膵炎のために、集中治療室で意識がもうろうとしたまま数日が過ぎていきました。
私達医療スタッフは検温や処置をする度に、意識レベルの確認のためもあって、何度も何度も繰り返し「○○さん、どうですか?痛くないですか?」と呼びかけました。もちろん、返事はありませんが。そして、ある日を境に痛みが引いていき、すべての検査結果が改善してきました。本人も意識が戻り、しっかりとお話が出来るようになりました。

「先生。私、ずいぶん寝ていたでしょう?夢の中で、とってもキレイなお花畑の中を歩いていました。とても、気持ちよく、安らかに過ごせました。でも、後ろから何度も私を呼び止める声がするので、仕方なく振り返ったら、今、ちょうど目が覚めたのですよ。」

これまでにも、何度か、こんな話をする患者さんにお会いしたことはありました。いわゆる「臨死体験」というものだと思います。「あの世」が本当にあるのかは別として、今回の1件以来、私は、意識のない患者さんに積極的に呼びかけるようになりました。付き添われているご家族にも、患者さんの耳元で話しかけてあげるように勧めています。

【あとがき】 これはブログ第1作目です。これが一番皆さんに読んでもらいたいブログです。実際の臨床の場では、ドラマのような感動的な場面に出会うことは滅多にありません。それでも、不思議な体験や気持ちが高まる場面を何度か経験しました。その時の気持ちを皆様に伝えたくてブログを始めました。なお、この患者さんは、ご縁があって今も元気にクリニックに通院されています。時々、診察の合間に身の回りに起こった不思議な出来事を楽しく聞かせてもらっています。

7 月 11 日, 2019

開院10周年を迎えました。

10年はあっという間でした。本日、開院10周年を迎えることが出来ました。家族やスタッフに支えられ、当院をご利用頂いている皆様のおかげで今日までやってこられたと思います。本当に有り難うございました。10年間の積み重ねで見えてきたものがあります。それは、患者さんのことを優先することが一番大事だということです。しごく、当たり前のことのようですが、結構難しい場面もあります。しかし、患者さんを最優先することで得られる結果は、患者さんご自身の利益(健康)だけでなく、私自身やスタッフの充実感という副産物も生まれることが、この10年間の経験で良くわかりました。

これからも、より一層の向上を目指してクリニックを続けていく所存です。どうか、よろしくお願いいたします。


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