4 月 18 日, 2020

コロナウイルスに思うこと③(R2/4/18)

トイレはふたをしてから流しましょう!先日、日本全国に『緊急事態宣言』は発令された新型コロナウイルス肺炎との戦いはまだまだ続きそうな情勢です。当院も試行錯誤を繰り返しながら、より安全な方策を考えて取り組んでいます。

① 人→物→人感染に注意する。
新型コロナウイルスは人→人の感染を来しますが、人→物→人の感染もクローズアップされてきています。外出制限をおこなっても、感染者が思うように減らない一因と考えられています。そこで、院内での物からの感染を防ぐために、待合室の雑誌を引き上げ、給湯器(サーバー)をストップしました。消毒液での拭き掃除を朝と午後の診療開始前におこなっています。特に、受付テーブル、診察台(1診、2診)、処置室テーブル、ストレッチャーなど、多くの方が触れる場所は特に注意しています。

② 便からの感染に注意する。
新型コロナウイルスは便中に大量に存在しているようです。トイレのふたをしないで水を流すと、ウイルスが飛散するので、必ず、ふたをしてから水を流すことが大切です。そこで、当院では、大腸カメラの前処置の下剤はご自宅で飲んでもらうことにしました。また、スタッフには、トイレ掃除の際は、ゴーグルを付けるように指示しています。
便器はもちろんのこと、ふたの内側、レバー、操作パネルおよび壁も消毒液での拭き掃除を指示しています。

③ 感染の可能性のある方とそうでない方の動線を分ける。
発熱、咳、呼吸苦、強い倦怠感、味覚・嗅覚異常、等の症状のある方は、最初に「帰国者・接触者相談センター」に相談してもらいます。その結果、クリニックでの診察を指示された場合は、当院でも対応しています。電話連絡を受けて、車で来院される場合は、駐車場で聞き取りをおこないます。歩いて来られる場合は、玄関脇に椅子をご用意していますので、そこで聞き取りをおこないます。症状から処方をおこない、数日間の自宅療養(経過観察)をお願いしています。症状の改善が無い、増悪した場合は、再度「帰国者・接触者相談センター」に連絡するか、発熱外来をおこなっている総合病院に問い合わせています。

4 月 5 日, 2020

コロナウイルスに思うこと② 令和2年4月5日

(青:欧米) vs (赤:日本)コロナウイルス感染によって、日々刻々と情勢が変わっていきます。クリニックを訪れた皆さんや私を含めたスタッフがクリニック内で感染する確率を出来るだけ低くする努力は怠らないようにしようと考えています。

① 換気を良くする
待合室、検査室、リカバリールーム、等窓を少し開けて新しい風が入るように心掛けています。
② スタッフのマスク着用・消毒の徹底
受付、ドアノブ、トイレ回りなどアルコール消毒をこまめにやっています。待合室の雑誌や冊子は感染予防のために引き上げています。
③ 予約枠の増設
これまで、午前中1時間、午後1時間の予約枠を取っていたのですが、現在、午前中2時間、午後1時間に増やしています。予約は15分に1名ですので、予約時間どおりに来院してもらえば、患者さん同士が接する機会はかなり少なくなります。
④ 電話再診の活用
慢性疾患や難病で通院している方で、病状が落ち着いていれば、電話再診が可能です。来院する必要が無くなりますので、「もし、クリニックで感染したら・・・」という不安は解消できます。ご希望の薬局に処方箋をFAXしておきますので、ご自身で薬を取りに行ってください。
⑤ 診察の工夫
病状が安定している方であれば、診察室では問診だけにしています。聴診器を当てたり、触診することは控えています。2分以内の会話であれば、感染の可能性は低いとのことですので、今は簡素な診療を心がけています。なお、初診の方やいつもと症状が違う方はこれまで通り、しっかり診察します。
⑥ 発熱・咳症状の方の動線をそれ以外の方と分ける
発熱・咳症状で、車で来院された方は車内で待機してもらいます。タクシーや歩いて来院された方は待合室と離れた場所で待ってもらっています。感染予防の観点から止むを得ず導き出した方策です。ご理解の程よろしくお願いいたします。

【余談❶】ネットで見つけたグラフです。縦軸はコロナウイルス感染者数です。縦軸が対数であることに注意してください。0→10→100→1,000→10,000といった具合に等間隔になっています。横軸は時間です(3/25現在)。
感染者は指数関数的(倍、その倍、さらにその倍というふうに)に増えていきますので、患者数を対数でみると直線になります。
青い直線が欧米で、赤い直線が日本です。日本の傾きは非常に緩やかです。このグラフを見て、皆さん少しでも安心してください。

【余談❷】
「いたがき歯科クリニック」つれづれ日記』というブログを読むと、とっても勇気が湧いてきます。東京の方で開業されている歯科医さんです。

4 月 1 日, 2020

Colitic cancer(炎症性腸疾患由来の大腸がん)

「お腹痛い」炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎では大腸がんのリスクが高くなることが知られています。

70代女性
40年前から潰瘍性大腸炎を患っておられました。ここ数年は寛解状態が続いていたのですが、大腸カメラを希望され2年ぶりに来院されました。大腸カメラで、横行結腸に1cm大の扁平な隆起を認め、周囲の炎症性粘膜とは印象が違っていました。生検で大腸がんと診断されました。

言葉の区別
通常の大腸がんは、colon cancerと英語表記しますが、IBD由来の大腸がんはcolitic cancer と表記します。大腸炎(colitis)に由来するがん(cancer)という意味なのでしょう。

頻度
IBD患者さんの大腸がんリスクは、一般の人と比べて1.6から2倍と言われています。罹患10年で1%、20年で2%、20年以上で5%の発症率と言われています。

発癌のメカニズム
IBD由来の大腸がんは炎症性発がんであり、この点が通常の大腸がんと大きく異なります。慢性の炎症をベースに発がんするものには、ピロリ菌感染による慢性胃炎に出来る胃がんや、ウイルス性慢性肝炎に出来る肝臓がんなどが挙げられます。

治療方針
以前は、IBD由来の大腸がんは『全大腸切除』が一般的でしたが、最近では、内視鏡的粘膜切除が適応されることも可能となってきました。この方は、大腸全摘出術が施行されています。

IBD由来の大腸がんの知識はありましたが、経験したのは初めてでした。今回の経験を今後の診療に生かしていこうと思います。

3 月 11 日, 2020

コロナウイルス感染症①(公衆衛生学的アプローチ)

PCR(陽性):70(コロナ有り) 299,970(コロナ無し)
PCR(陰性):30(コロナ有り)   699,930(コロナ無し)

北九州市(100万人)に100人のコロナウイルス感染症の方がいると仮定します。
(令和2年3月10日現在 1名の報告あり)。
有病率は100/1,000,000=0.01%です。
コロナウイルス感染症の診断に用いられているPCR検査の感度は70%程度とされています。ですから、コロナウイルス感染(+)の100人を検査すると、70人が陽性に、30人が陰性に出ます。
PCR検査の特異度(陰性の人に正しく陰性と出る確率)の報告が見当たらなかったので、仮に70%と設定します。100万人から100人を差し引いた999,900人の70%(699,930人)が正しくPCR陰性と診断されます。しかし、999,900人の30%に相当する299,970人もの方がコロナウイルス感染していないのにPCR陽性(偽陽性と言います)と判断されてしまいます。
その結果、コロナウイルスPCR検査の精度(PCR陽性の中の真のコロナウイルス感染患者さんの比率)は70/70+299,970)=0.02%と異常に低い値になってしまいます。

100万人都市で100人の病気の人を探すために、全員にPCR検査をおこなうと、約30万人の人が該当してしまうのです。このように、有病率の低い疾病に対して「全例検査」は莫大な『偽陽性』を増やし、社会を混乱に陥れ、助けなければならない人を助けられない状態をもたらすだけです。

しかも、治療法が確立していない現状では、早期に診断することで救命率が上がるわけではありません。仮に、コロナウイルス感染症と診断がついても、軽症であれば、自宅療養を指示されるだけです(コロナウイルス肺炎の80%は軽症)。日々、死の恐怖を意識しながら自宅で過ごすのであれば、知らないで「念のため」と思って過ごす方が精神的に楽だと思うのです。

コロナウイルスのPCR検査は、必要な人に限っておこなうべきなのです

2 月 16 日, 2020

ポリペクトミー後出血(後半)

開院以来(11年間)1,295名のポリペクトミーをおこなってきました。そのうち、22名にポリペクトミー後の出血を来しました(1.7%)。

出血状況
出血までの日数は平均1.9日(3時間後~4日後)であり、ポリペクトミー後の2~3日間は安静が重要であることを再認識しました。
22名中20名にクリップによる止血術をおこなっています。うち3名は夜間の対応であったため、近隣の総合病院で止血術をおこなってもらいました。感謝の気持ちで一杯です。
当院で止血術をおこなった17名についてさらに検討してみました。
観察時に凝血塊が付着しているものの止血状態であったものが10名、にじみ出る様な出血を来していたものが7名、湧き水様の出血を認めたものが1名おられました(重複あり)。ですから、ポリペクトミー後出血は出来るだけ早急に内視鏡検査をおこない、出血部位を観察することが必要であると思います。
出血した内視写真をもう一度丹念に見ていくと、凝血塊の場所がクリップとクリップの間よりもクリップの列の外に位置してことが時々見られることに気付きました。クリップをかける時に今までのイメージよりより長い距離の縫合が必要なのかもしれません。最近は、「これで十分」と思った手前に、念のためにもう1本クリップをかけるようにしています。

経時的な検討
2009年~2014年前期2015年~2019年後期と設定して、検討してみました。
2017年にコールドポリペクトミーを取り入れたことでポリペクトミーの件数は大幅に増えました。しかし、コールドポリペクトミーを除いた通常のポリペクトミー数は前期が75名(年間)に対して後期は77名(年間)と大きな変化はありません。
一方、前期のポリペクトミー後出血の頻度が2.5件(年間)に対して、後期は1.6件(年間)と減少しています。その一因として、止血予防にクリップをかける本数が、前期では平均1.3本であったのに対し、後期では2.6本に増えていることが関係していると思います。
ポリペクトミー後に十分に止血確認をおこない、必要に応じて止血処置をすることで、ポリペクトミー後の出血を減らすことが出来たという報告があります(兵庫医大、2018年)。予防的クリップが終了した後も丁寧に観察して、念のための「もう1本」のクリップを打つことでポリペクトミー後出血がもっと減ると信じています。

e3839de383aae383bce38397efbc91生食を局注しポリープを浮かせます。通電しながらスネアで切除します。傷口をクリップで縫合します。

2 月 9 日, 2020

ポリペクトミー後出血(前半)

開院以来(11年間)1,295名のポリペクトミーをおこなってきました。そのうち、22名にポリペクトミー後の出血を来しました(1.7%)。

①患者さんの背景

22名の平均年齢は58才、男女比は12:10でした。最も若い方は20才、最高齢者は82才です。
男性(12名)の平均BMIは26でした。女性(10名)の平均BMIは21でした。男性の場合、肥満気味の方が多いようです。
出血に影響する血圧や動脈硬化の疾患の有無について調べました。
降圧剤を内服中の方が9名、高脂血症の治療中の方が2名います。糖尿病の方はいません。他、肝硬変症1名、透析中の方が1名でした。
不整脈(心房細動)に対して抗凝固剤を内服されている方が1名いました。

②ポリープの特徴

切除したポリープの大きさは平均7.5mmでした(4~20mm)。ポリープの形は、有茎性(3名)、亜有茎性(3名)、無茎性(15名)、表面隆起型(1名)でした。ポリープの部位は、S状結腸が9名、直腸が8名、横行結腸が6名でした(1名に2か所からの出血あり)。S状結腸は屈曲が強く、良好な視野が確保しにくいことが一因と思われます。直腸と横行結腸は意外な印象でした。いずれのポリープにもがんは認めませんでした。

手技に関する検討

ポリープ切除をおこなった際には、後出血の予防のためにクリップによる創部の縫合をおこなっています。予防的クリップは、平均1.8個(0~4個)でした。コールドポリペクトミー後の出血が1名おられましたが、コールドポリペクトミーの場合は予防的クリップおこなっていません。1.8という数字は意外に少ない印象でした。切除面が広い場合、クリップの本数は必然的に増えますので、切除面の広さと出血はそれ程関係ないようです。

無茎性のポリープ(8mm)です。生食を局注しポリープを浮かせます。通電しながらスネアで切除します。傷口をクリップで縫合します。

1 月 7 日, 2020

令和1年の診療報告

令和1年も多くの方に当クリニックを受診して頂きました。
本当にありがとうございました。
当院を知って頂くために、昨年1年間の診療内容をご報告いたします。

1) 内視鏡検査を受けた方が2,209名います。
胃カメラを受けた方 1,259名
大腸カメラを受けた方 951名
『胃ドック』を受けた方 2名

食道がんが見つかった方が1名います。
粘膜上皮(m1)までの早期がんだったため、内視鏡治療で完治しています。
好酸球性食道炎の方が1名います。

北九州市の胃がん検診を受けた方が103名います。
胃がんが見つかった方が6名います。
アニサキス虫体を摘出した方が1名います。
PTP包装シートの誤飲の方が2名います。
内視鏡にフードを装着し、無事に回収しています。
胃粘膜下腫瘍で手術された方が1名います。

大腸がんが見つかった方が14名います。
最年少は36歳の方です。
4名の方は粘膜内がんであったため、内視鏡治療で完治しています。
大腸ポリープ切除術を受けた方が257名います。

2) ピロリ菌の除菌に成功した方が141名います。
ヘリコバクターピロリ菌に感染している場合、まず1次除菌をおこないます。
1次除菌で菌が消えなかった場合は、2次除菌をおこないます。
2次除菌でも菌が消えなかった場合は3次除菌を勧めています。
1次除菌で菌が消えた方が117名います。
2次除菌で菌が消えた方が22名います。
3次除菌で菌が消えた方が1名います。
ペニシリンアレルギーの方の除菌に成功した方が1名います。

3) 炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎の方が65名います。
1名の方は生物学的製剤(ヒュミラ)の投与を受けています。
クローン病の方が8名います。
6名の方が生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ)の投与を受けています。
腸型ベーチェット病の方が1名います。

4) 細菌性腸炎
便の培養詳細で細菌が検出された方が24名います。
一番多かったのは、病原性大腸菌(18名)で、次に多かったのが黄色ブドウ球菌(4名)でした。
病原性大腸菌のうち1名はベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌O-157でした。
抗生物質起因性の嫌気性菌クロストリジウム・ディフィシルが検出された方が1名います。

5) 急性虫垂炎が5名います。
4名は手術になりました。

6) 肝臓の病気
B型肝炎に対する抗ウイルス剤(エンテカビル)の投与を受けた方が5名います。
原発性胆汁性胆管炎の方が14名います。
自己免疫性肝炎の方が2名います。

7) 胆道疾患
胆石が見つかった方が29名います。
6名が手術を受けられました。

8) すい臓の病気
胆石性急性膵炎の方が1名います。
慢性膵炎の方が3名います。
すい臓がんの方が3名います。
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の方が2名います。

9) 糖尿病
インスリン治療を受けた方が2名います。
インクレチン関連薬(DDP-4阻害薬)の治療を受けた方が64名います。

10)甲状腺の病気の方が22名います。
甲状腺機能亢進症(バセドウ氏病) 3名
甲状腺機能低下症(橋本病) 19名

11)禁煙外来を受けた方が12名います。

12)インフルエンザにかかった方が58名います。

13)24時間心電図を受けた方が4名います。

14)睡眠時無呼吸症候群の検査を受けた方が8名います。
1名が持続陽圧呼吸療法(CPAP)を導入されました。

15)スパイログラフィー(肺年齢測定)を受けた方が7名います。

16)その他
尿管結石(手術)、絞扼性イレウス(手術)、大腿ヘルニア(手術)、食道裂孔ヘルニア(手術)
線維筋性異形成、原発性アルドステロン症(2名)、シェーグレン症候群、黒内障、副甲状腺機能亢進症

1 月 1 日, 2020

2020年 ねずみ年です。謹んで新春のお慶びを申し上げます。

皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。
新年から新しくスタッフ2名が加わります。より一層充実した医療を提供する所存です。

本年もよろしくお願いいたします。

令和2年1月1日 中野胃腸クリニック 中野重一

11 月 1 日, 2019

よもやま話(110)「診察で最近気付いたこと」

寄り添うことは、まず聞くことから。【20代女性】10数年来の”おなら”の多さに悩んでいるとのことで来院されました。腹部の診察では、打診上、腸にガスが溜まっていることを示す「鼓腸」ではなく、S状結腸に固い便を触れるというわけでもありませんでした。”おなら”の臭いも特別強くは無いとのこと。便秘でも無いことから、病的な原因は見当たりませんでした。

”おなら”には主にメタンガスと硫化水素ガスがあります。炭水化物は乳酸菌等(善玉菌)によって代謝され、におわないメタンガスを産生します。蛋白質はウェルシュ菌等(悪玉菌)によって代謝され、におう硫化水素ガスを産生します。

未消化便は発酵しやすくガスの原因になるので、消化の良いもの(糖質)の比率を上げること、小腸での消化吸収を助けるために、消化酵素剤を処方すること、便が大腸に長く留まるとガスが発生しやすくなるので便秘しないような生活習慣を送ること。便秘予防の具体策としては、食物繊維を沢山摂る、水分をしっかり摂る、適量の運動やリラックスすることなどを説明しました。しかし、患者さんは納得された様子が無いまま診察は終了しました。

自分なりに、必要な説明をしたつもりだったので、「言われたことをやってみます。」というポジティブな返事が返ってこなかったのが意外でした。

どうすれば、患者さんに納得してもらえるだろうか考えてみました。私が話した内容なら、すでに他の医師が説明し知っておられたかもしれません。問診の際に、普段は何を食べているとか、何を食べるとガスが多くなる傾向にあるのかとか、ガスが出て困る時はどんな状況かとか、もっといろいろ聞きだすべきだったと思います。
”おなら”が多いということは、他人から見れば、大した問題ではないけれども、本人にとっては切実な問題なのですから、その悩みを理解してあげるだけかも良かったのかも知れません。答(治療法)を見つけるのではなく、苦しみを分ってもらえるだけで、楽になることもありますから。それが、「患者さんに寄り添うこと」かも知れません。

10 月 6 日, 2019

「開院10周年記念シーズン4」❻すい臓がん

今回のシリーズはある疾患について、当院の症例を集計して、その結果を検討したブログを特集しています。良かったら、読んでみてください。(2019年作成)

緑色がすい臓です。重さわずか120gです。最近、週間に名のすい臓がんが見つかりました。普段は、年間に名いるかいないか程度なので、とても驚きました。そこで、開院以来10年間の当院のすい臓がん患者さんを調べてみました。

すい臓がん患者さんの総数は11名でした。男性名、女性名です。年令は、39才から85才迄で、平均年令は66才でした。すい臓がんのリスクファクターとして、膵炎の既往、糖尿病、肥満、喫煙、大量飲酒、高脂血症、などが指摘されています。これら11名の中には、アルコール性膵炎の既往のある方が名、MBIが30以上の高度肥満の方が名いらっしゃいましたが、そのほかの方は、これといったリスクファクターが見当たりませんでした。
全員腹部造影CT検査で確定診断がついています。進行度は全員ステージⅣで、腫瘍径が2cm以下の「小膵癌」の方はいらっしゃいませんでした。手術が可能な方はひとりもおらず、かなり病気が進行した時点で見つかったわけです。

最近のすい臓がんの本邦死亡者数は年間千人であり、10年前に比べると約万人も増加しています。10年間で1.5倍に増えたわけです。国立がんセンターの先生は、増えた要因は、①長生きする人が増えたから、②造影CT検査の精度が上がったからと解説されています(ドクターサロン2019月号)。しかし、この10年間に、高齢者が1.5倍も増えたでしょうか? この10年間でCT装置に画期的な進歩があったでしょうか? 答えはいずれも「いいえ」です。

九州がんセンターの先生が興味ある取り組みをされています。早期のすい臓がんを見つけるために、造影CT検査とMRI(MRCP)を両方おこなう人間ドックを始めたのです。しかし、年間やってみて、名もすい臓がんを見つけることが出来ませんでした。その要因として、ハイリスクグループの方がほとんど受診せず、健康志向の高い方の受診が多かったためではないかと考察されています。医師の思い通りには対象者が集まってくれなかったわけです。

一般的に、すい臓がんは発がんから発症まで長い年月を要すると考えられています。しかし、当院で経験した患者さんの中に、すい臓がんと診断されるか月前に腹部造影CT検査を受けていた方がおられます。その時点では、まったくすい臓に異常は無かったのです(念のために、放射線科医に再度確認してもらいました)。発がんから発症、そして進行までの時間経過はまだ詳細にはわかっていません。

ピロリ菌と胃がん、
便潜血検査と大腸がん、
B型肝炎・C型肝炎と肝臓がん、
といった具合に、絶対的なリスクファクターがすい臓がんでは見つかっていないのが現状です。

【あとがき】まとまった数の症例を検討するためには、まず、カルテに病名やデータを正確に記録しておくことが必要です。日々の診療を丁寧におこなっていなければ、データが不揃いになり、検討することが出来ません。これからも、臨床研究をやるつもりで、診療に向かいたいと思います。

『開院10周年記念シーズン4』は今回で終了いたします。ご愛読有り難うございました。


Social Widgets powered by AB-WebLog.com.