6 月 10 日, 2017

大腸smがん 1,000μmと800μm

初期の大腸がんは内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。先日、ポリープ切除をおこなった患者さんがsmがんでした。
大腸粘膜の層構造です。

大腸の壁は、内側から、①粘膜(粘膜固有層) ②粘膜下層 ③筋層(固有筋層) ④しょう膜下層 ⑤しょう膜 の5層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。【右図参照】

がんの深さが①にとどまっていれば内視鏡治療で完治します。絶対にリンパ節転移はありません。
がんの深さが③④⑤であれば、外科手術が必要です。

②(粘膜下層)にがんが浸潤していた場合、粘膜筋板から1,000μm(=1mm)までの深さであれば、内視鏡治療で良いとされています。1,000μm以上あければリンパ節転移の可能性が10%程度出てくるために手術をした方が安全です。

先日、大腸ポリープ切除をおこなった患者さんの結果がsmがんでした。粘膜筋板(粘膜と粘膜下層の境にある薄い筋肉の層)からのがんの最深部までの距離は800μmでした。わずか、200μmの差でポリープ切除だけでOKという結果でした。しかし、それ程、人の心は単純ではありません。

・追加切除術を受けなかったばっかりに、数年後に、再発したらどうしよう。

・追加切除する必要が無いのに、手術を受けて、やっぱりリンパ節転移が1つも無かったら、その結果を素直に喜べるだろうか。手術しなければ良かったと後悔しないだろうか。

どちらを選択しても、不安と後悔を完全に消し去ることは出来そうにありません。

治療の選択に悩むということは、それだけ選択肢があるわけで、ある意味幸せなことです。治療方が1つしかない、あるいは、治療方が無い場合だってあるのです。

この患者さんは手術をしないで、経過をみていくことを決心されました。

5 月 30 日, 2017

乗馬日記(10)  復帰

北九州市若松区の「若松乗馬倶楽部」に通うようになって、早や、1年8か月が過ぎました。上手に乗れるようになった時に、「そんなことも出来なかったのか。」と懐かしがってみたく乗馬日記を始めました。乗馬の最終目標は、「若松の海岸をさっそうと駆け抜ける」です。

乗馬は楽しいですよ。落馬から3か月経ちました。腰の痛みはほぼ消失しました。「やっぱり乗馬がしたい。」という気持ちが強いことを確かめて、乗馬を再開しました。何があっても自己責任です。覚悟の上です。
ブランクがあると、出来ていたことが出来ないものですね。頭絡を装着するのも一苦労です。こわごわと、並足、軽速歩をしばらく繰り返し、いよいよ駈足にチャレンジです。上手く出来ました。
現時点のチェックポイント
① 右足の鐙(あぶみ)の踏み込みが弱い。右足の踵を下げる。
② 手綱を持つ手の位置を動かさない(拳の位置が動くと馬は止まれのサインと思ってしまうから)。
③ 肘の動きを柔らかくする。
④ 両肩の位置を後ろに反らして、視線は必ず進行方向を見る(日頃から下を見て歩く習慣あり。日頃から気を付けよう!)。
⑤ 下半身はしっかり馬体に固定しつつ、上半身はリラックスする(これの逆は得意です。)
そして最後に、
⑥ 手綱はしっかり握っておく。手綱さえ離さなければ、落馬はしない。

チェックポイント多過ぎ!

5 月 20 日, 2017

腹部レントゲン写真で胃拡張が見えました(その2)。

息をとめて~。カシャッ!

以前、腹部レントゲン写真から胃拡張を診断したエピソードを紹介しました。今回も、また、同じ経験をしました。

70代の男性の方で、食事が摂れないから点滴を希望されて来院されました。腹部レントゲン写真を撮ってみると、腸のガスがお腹の真中から下に向かって凸状に弧を描くように圧排されていたのです。通常の腹部レントゲン写真では、胃は穹窿部のガス像が写る程度でほとんど存在感がありません。しかし、この写真は、「胃が張っている」という状況を感じました。

救急病院で腹部CT検査を受けて頂いたところ、胃の出口にがんが出来ていて、食物が胃から十二指腸へ進みにくくなっていたのです。そのために、胃がパンパンに張っていたのでした。
前回の経験が2回目だったので、今回が3回目です。1回目と2回目の間は10年以上開いていたのに、2回目と3回目の間は数か月です。そこも不思議でした。

5 月 10 日, 2017

「寄り添う」について考えてみました。

雪だるまも寄り添っています。最近、よく耳にする言葉のひとつに「寄り添う」というのがあります。
「被災者の皆さんに寄り添って・・・」
「患者さんの気持ちに寄り添う医療を・・・」
などです。

この「寄り添う」のイメージでは、
・そばにいて、話を聞いてあげる。
・少し離れたところから見守っていてあげる
・少しでも明るい気持ちになれるように、励ましてあげる。
等々でしょうか。

でも、「寄り添う」を行動に移すとなると難しいのです。
話を正確に理解することが、話を聞いてあげるということでもないのです。
見守っているだけでは、気付かれないかもしれません。
励ますことが本人の自信を失わせ、逆効果になることもあります。

寄り添ったつもりでも、相手が寄り添ってもらったと感じたのか分かりません。
どうすれば、「寄り添ってもらえた。」と感じてもらえるのでしょうか?

「寄り添う」って難しい。
それが出来れば、医療人として、人として、一歩前進なのでしょうね。

4 月 30 日, 2017

中性脂肪(脂肪酸)で知っておきたいこと。「α-リノレン酸」

しそってスゴイ!何となく悪者のイメージのある中性脂肪。確かに、ラード(豚油)やバターは沢山食べれば、血中の中性脂肪やコレステロールが上がります。ラードやバターが飽和脂肪酸であるのに対し、不飽和脂肪酸は体に良い脂肪酸です。今回は、不飽和脂肪酸についてお話します。

体内で合成できない脂肪酸(必須脂肪酸)、すなわち食物からしか摂れない脂肪酸は、リノール酸(ω6)とアラキドン酸(ω6)とα-リノレン酸(ω3)の3つです。(ω:オメガ)

ω9(オリーブ油、キャノーラ油)、ω6(ごま油、くるみ)、ω3(えごま油、亜麻仁(あまに)油、DHA、EPA)と、数字が少ない程、体に良いものと考えて良いでしょう。

そうすると、必須脂肪酸でω3でもあるα-リノレン酸は是非とも意識的に摂取しておきたいですよね。α-リノレン酸はえごま油、亜麻仁(あまに)油の他にしそもあります

昔の人は偉いですね。梅干しを作る時にしそを入れますものね。ちなみに、α-リノレン酸は、熱に弱いので、調理方法に気を付けてください。また、取り過ぎるとかえって体に悪いので、1日小さじ1杯程度で十分です。

【まとめ】
① 体内で合成できない脂肪酸がある(必須脂肪酸)。
② ω3系は、とっても体に良い脂肪酸である。

4 月 20 日, 2017

超音波(エコー)検査で胃拡張が見えました。

魚の群れを見つけたぞ!食欲不振で来院された70代の男性の方です。
3日間、ほとんど何も食べることが出来ないので、点滴を希望されて来院されました。お腹を打診すると、胃の辺りの音がなんか変です。超音波(エコー)検査で観察してみると、胃液をパンパンに貯めた胃が観察されました。通常、超音波(エコー)検査では、胃や腸のなどの管腔臓器は観察できません。エコーは空気を通さないからです。もともと、超音波(エコー)検査は、魚群探知機を人間の体に応用したものらしいです。ですから、水の中は良く見えるのです。普段見えないものが見えること自体が異常です。救急病院にお願いしてその日のうちに腹部CT検査を受けて頂き、十二指腸に狭窄があることが確認されました(狭窄の原因は、すい臓の腫瘤でした)。

以前、腹部レントゲン写真で胃拡張を診断したことをブログで紹介しましたが、今回は、超音波(エコー)検査で診断することが出来ました。

4 月 10 日, 2017

『経鼻内視鏡』やっています。

鼻の穴からカメラが入ります。先日、当院を受診なさった方から、「このクリニックは、経鼻内視鏡はやっていないのですか?」と尋ねられました。「ホームページにも書いていないから」という理由でした。いえいえ、経鼻内視鏡検査もやっています。さっそく、ホームページに経鼻内視鏡のことを書き加えることにしました。

過去に胃カメラを受けて、嘔吐反射が強く、大変つらい思いをした方がいらっしゃると思います。また、胃カメラに対する漠然とした恐怖感を持っている方も多いと思います。そういった方には、『経鼻内視鏡』をお勧めしています。鼻の穴を通ってカメラが進むため、嘔吐反射の誘因となる舌根部をカメラがほとんど圧迫しません。比較的楽に検査が受けられます。
ただし、カメラが細くなった分、ある程度、画質の低下や送気・送水能力の低下があることも事実です。ですから、通常の内視鏡検査がさほど苦にならない方は、敢えて経鼻内視鏡を選ぶ必要は無いと思います。

3 月 27 日, 2017

ブログで診察(17)   便潜血

いつものブログ先生です。体のチョッとした不調や気になる症状、一度、医師に聞いてみたかったことなどを日々の診療からピックアップしてブログで紹介しています。

【質問】大腸がん検診の「便潜血」検査はなぜ2回おこなうのですか? また、1回だけ陽性でも、検査を受けなければいけないですか?
(60代 女性)

【答え】2回行うのには、意味があります。
大腸がんが存在しいて便潜血反応が陽性に出るのは60%程度です。大腸がんがあっても陰性に出る確率が40%あるわけです。そうすると、2回連続陰性になる確率は16%(0.4 x 0.4=0.16)なります。言い換えれば、大腸がんがある場合は、2回のうち、1回もしくは2回陽性になる確率は84%になるわけで、2回検査をおこなえば、検査の正確性がかなり高くなるわけです。2回の検査のうち、1回でも陽性に出れば、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

3 月 6 日, 2017

ブログで診察(16)   腫瘍マーカー

体のチョッとした不調や気になる症状、医師に一度聞いてみたかったと言われたことなどを日々の診療からピックアップしてブログで紹介しています。

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【質問】健診で腫瘍マーカーのひとつであるCEAが5.7(正常は5未満)と異常を指摘されました。どうしたらいいのでしょうか?(50代 女性)

【答】腫瘍マーカーでがんの早期発見は難しい。

腫瘍マーカーは進行したがんを見逃さない効果はあります。また、がんを手術や抗がん剤、放射線などで治療した場合の効果判定にも役にたちます。あるいは、がんの再発の発見にも役立ちます。しかし、がんの早期発見には向かないでしょう。

実は、腫瘍マーカーに正常値はありますが、異常値が出た時に、その測定値での感度と特異度がわかっていないのです。例えば、この方のCEA5.7は何%の確率でがんが存在するのかわからないのです。ですから、徹底的に検査を進めていくべきなのか、1年後にもう一度CEAを測定する程度で良いのか、あるいは、まったく無視していいのか、判断に迷うわけです。

もうひとつの問題が、腫瘍マーカーはそれ程、臓器特異性がないということです。CEAは、大腸がんが有名ですが、甲状腺がん、胃がん、肺がん、すい臓がん、子宮がん、等多くの臓器で上昇します。精査をするといっても、いったいどこから始めればいいのか迷ってしまいます。なお、PSAに関しては、前立腺がんの特異性が高いことが知られています。

CEAの場合、喫煙者で高く出る傾向にあります。しかし、「CEAが高いのはタバコのせいで、がんの心配はないですよ。」と言い切ることは出来ません。なぜなら、肺がんが隠れているかも知れないからです。禁煙をした後に、CEAが下がってくるのか確かめるべきです。

健診や人間ドックのオプションに腫瘍マーカーがあっても選ばない、という方法もひとつの解決策かも知れません。

2 月 28 日, 2017

診療報酬シリーズ(21) 診療報酬の点数に関する私見

このシリーズは、開業年目の私の知識が、母校の新規開業した先生、あるいは、開業を控えている先生のお役にたてればと思い始めました。その対象でない方は読んでも面白くありませんので、予めご了承ください。
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① 診療報酬は命に関わることには点数が高い。

例えば、内視鏡検査で大腸ポリープを切除した場合、5,000点です(1点=10円)。ところが、切除後数日経過した後に下血し、急きょ、内視鏡的に止血術をおこなった場合は、10,930点と倍以上の高い点数が付きます。大腸ポリープ切除も止血術もほぼ同じ処置内容です。「切る」か「止血する」かの違いだけです。ただし、止血できなければ、生命を脅かす場合もあり得るわけですから、高い点数が付いているのだと思います。
一方、歯科の点数が異常に低いことをご存知ですか。私自身の経験ですが、30分間かけて、歯石や歯肉の手入れをして頂いても、400点程度でした。これでは、歯科医院が閉院に追い込まれるのもやむを得ないと思います。点数が低いのは、虫歯では死なないから?

② 診療報酬の髙点数に惑わされてはいけない。

国の政策は、医療費の抑制目的で入院患者さんを在宅医療に移行しようとしています。開業医が在宅医療を積極的に取り入れるように、非常に高い点数が付けられました。夢の様な点数です。そのため、診察室の無い「在宅専門クリニック」も出来ました。そして、ある程度、在宅医療が浸透してきたころを見計らって、大幅な点数の引き下げがおこなわれました。まさに悪夢です。ですから「点数の高い・低い」に惑わされることなく、自分の信念をつらぬかなければ、ひどい目に合うと思うのです。

③ 診療報酬は確実に下がっています。

例えば、糖尿病の治療のひとつであるインスリン自己注射を例にとってみましょう。
20年前は管理料として1,000点程度が算定されていました。
10年前ぐらい前から880点に減額され、昨年からは750点に下げられました。2型糖尿病に安易にインスリン治療を併用するなどの医療側の要因もあると思いますが、財源が厳しいのが最大の理由だと思います。

④ 点数が決められていることの安心感

同じ自営業として、レストランを例にとってみましょう。ランチをいくらに設定するか悩みます。売れ行きが悪ければ、もう少し値段を下げようかと思案したりするでしょう。ところが、医療は値段が決められていますので、悩む必要がありません。経営を成り立たせるためには、その医療行為に要する時間を短くする以外には方法は無いのです。その最たる弊害が「3分間診療」と揶揄される診察時間の短縮でしょう。だからこそ、診察に時間をかけることで、信頼関係が得られると私は信じています。


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